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授業なんてどうでもいい、なくてもいい
多田くんは怪しい
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 次の日、いつも通りの時間に教室に入った。HRが始まっても、多田くんは姿を見せなかった。ちなみに、私の席は黒板から見て右から二番目の列の最後尾だ。多田くんは左から三列目の先頭。3年になって話し始めたのは掃除がきっかけで、普段から話す間柄ではなかった。昨日までは。

 教室の後ろのドアが勢いよくスライドして、二人のクラスメイトが入ってきた。多田くんと照原くんだ。彼らは遅刻してきたことを悪びれもせず、それぞれ自分の席に腰を下ろした。担任の江藤先生が言った。先生は25歳独身の男性で、イケメンと定評がある。

 「お前ら、受験生の意識あるのか?」

 それに応えたのは多田くんだった。

 「もちあります。俺、大学行ってやりますよ」

 「多田はAO入試で行きたいんだよな。成績だけじゃなくて出欠席も出願対象になっていることは知っているか?」

 「えっ……」

 初耳だったらしい。私は、多田くんが硬直しているのを後ろから眺めていた。

 照原くんが声を上げて笑った。

 「お前そんなことも知らなかったの?そんなんで大学行くとか笑えるわ。つか実際のところ無理だろ」

 「うっせえなチキン野郎。お前こそ知ってたのかよ」

 「知るわけねえじゃん。俺、大学行かねえし」

 クラスがどっと沸いた。照原くんが他の男子に「じゃあ言うなよ!」とツッコまれる。その通りだ。多田くんをバカにはできない。それなのに、どうしてそんなに自慢げに言うんだ。男子全員があんなテンションではないが、照原くんに似た男子はちらほら見かける。私はどうもあのノリを好きになれない。自分が知らないことをさも知っているかのように語るノリはわりと多く使われる。笑いを取れるのは確かだ。それを好めない私はきっと頭が固いのかもしれない。

 HRが終わって、今日もまた淡々とした生活が始まる。私は乱れることのない集中力を全授業に注いだ。それでも完全にはいかない。4限目の後半でお腹が鳴った。それを聞いた隣席の桐山くんが私にカロリーメイトを無言でくれた。あまりに恥ずかしくて身体が火照った私は桐山くんの顔を見ずに、小声で「ありがと」と言った。

 昼食を友人と囲んで食べてから、午後の授業に挑む。一睡もすることなく、必死にノートを取っていたらあっという間に帰りのHRを迎えた。それが終わると、最後は掃除――

 「三ツ橋ー、箒折れたわ」

 多田くんが腹を抱えて私に報告してきた。

 「私、ちゃんと注意したよね。ここで野球しないでって。先生には自分で言ってきてよ」

 「うぇーい」

 問題なのは、ボールは硬式を使っているのにバットが箒なところだ。しかも投手の照原くんはガチで投げるのだ。教室で。それに呼応するように、多田くんは箒でボールをガチで打った。それは折
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