立てこもり犯に告ぐ
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『犯人に告ぐ!無駄な抵抗はやめて、大人しくでてきなさい!』
籠城した犯人に向けられる、余りにテンプレな台詞。
まさか俺に向けられる日が来るなんて、思いもしなかった。
何処でどう歯車が狂ったのか、もう本当に分からない。ただ、俺は強盗未遂というしょぼい罪状で、狭い四畳半の一室に追い込まれた。そして運悪くそこに暮らしていた住人の男は、人質として、俺に刃物を突き付けられている。小太りで妙に肌がつやつやしたこの男は、緊張のせいか息を荒げている。…気の毒に、こんな天気のいい休日に、俺なんかに押し入られて。
『犯人に告ぐ!犯人…なんだ?……え!?なんだって!?』
俺への呼びかけがふいに途切れた。不審に思いアパート下の人だかりを見下ろすと、先陣を切って呼びかけを行っていた刑事たちの一団がもめている。
『えっ…それ言っちゃっていいのか?でも…』
ごにょごにょごにょ
『そ、そうか、背に腹は替えられないな。分かった』
何だよ一体。
『あー、犯人に、告ぐ…』
歯切れが悪くなった。
『お前が人質として捕らえたその男性は…ホモだ』
―――はぁ!!??
思わず脇の下に抱え込んだ男の顔を見下ろす。奴は息を荒げて頬を上気させ、妙に潤んだ目で俺を見上げていた。う、うわ、こいつまじだ!!!
『インスタのプロフィール読み上げるぞ。……好みのシチュエーションは囚われの身、好みのタイプはオラオラ系ガリマッチョな30代、好きな食べ物は…男の子』
ひっ…ひいっ!!
『お前、どストライクだな……』
やっやめて―――!!
も、もう放したい、脇の下のコイツ今すぐにでもリリースしたい、嫌だ、嫌だ俺をそんなねっとりした目で見るな!!しかしこいつを放出したら、俺は……!!
『しかも衆人環視の中での言葉攻めが大好物だそうだ。この状況、ご褒美以外の何物でもないな。…この、ど変態が』
うるせぇ追加情報いらねぇよ!そしてなにさりげなく言葉攻めサービスしてんだよ!!
『あ、また追加の情報が入った。…人質の男性、ボクサー犬を飼っているだろう』
そういえば妙に人懐こい大型犬が、ひっきりなしに俺の腕に……
『その犬も、ホモだ』
げ―――!!!
『飼い主に毎晩手ほどきを受け、すっかり開眼したらしい』
ぎゃあぁぁあああ何か汚い汁が腕に、腕に!!!!ああああでも拭けない、拭いたらこのホモが何をしだすか!!や、やめろ股間に首を突っ込むな、何か邪悪な意思を感じる、やめろおおおお!!!!
『最近、上手になったらしいぞ。折角だからやってもらったらどうだ』
「ふっふざけんな―――!!早く逃走用の車を手配しろ!!人質の命がないぞ!!!」
再び周囲がざわつき始めた。プロフィール読み上げ始めた時点で既にざわめきっぱなしだ
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