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授業なんてどうでもいい、なくてもいい
多田くんは面倒くさい
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が必要じゃん?それが俺にないんだ」

 「動機ないのに大学行くの?それ金の無駄でしょ」

 「今の時代、大卒じゃなきゃやってらんねえだろ。とりま入れてもらうんだよ」

 その動機作りに私を利用しようということか。私はようやく納得した。しかし、多田くんはどんな大学を志望しているのだろうか。人の欠点を直す手伝いを動機付けにできるような大学に心当たりがない。

 「多田くんは、どこの大学を受けるの?」

 「東大」

 「調子乗んな」

 「東京勧善大学」

 「調子乗んな」

 「乗ってねえよ!ホントにあるわ!」

 「私聞いたことないんだけど」

 「しょうがないよ。場所、モンゴルだからね」

 「東京じゃない!」

 なんてこった。それは知らなくて当然だ。さすがの私もモンゴルの大学は管轄外だった。というか、冗談と言ってほしい。ツッコみどころ満載で末恐ろしくなる。

 多田くんは言った。

 「そういうわけだからさ、受験のために利用されてくれない?対価は払うから」

 「お金?」

 「俺の身体」

 「モンゴルくらいどうでもいい」

 「お前モンゴルに謝れや」

 かはっと口を大きく開けて笑う多田くん。私はとりあえず迷ってみた。確かに理由としては分からなくはない。『なぜ私?』という疑問は残っているが、多田くんの素振りを見ていると嘘を吐いているように思えない。それが面倒だった。3年間同じ環境にいたはずの多田くんについて全く把握していない自分に気づいた。

 気づけば、私は口を開けていた。

 「いいよ。利用されてあげる」

 「え、マジで?さすが三ツ橋!よっ、可愛い!脚細い!」

 多田くんの言葉は黙殺して、私は教室を出た。それからしばらく廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。多田くんだった。

 「なあ、三ツ橋」

 多田くんの姿はだいぶ遠かった。でも、声は身近にいるのではと思うくらい大きかった。

 「なに?」

 「お前、好きなやついんの?」

 いきなりの質問に声が詰まった。だが、平静を装って言葉を返すことはできた。

 「いないよ」

 「そっか。ま、ちなみに俺はいるけどな。じゃ、また明日」

 多田くんはそう言って、私とは真反対の方に駆けていった。なぜそんなことを聞いたんだろう。そして自分のことを話したんだろう。訳が分からなかった。私の嘘に気づいた様子はなかった。まあ、相手が多田くんだから心配もしていなかったけれど。

廊下に残ったのは、いくつもの疑念を頭に詰め込まれた私だけだった。
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