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授業なんてどうでもいい、なくてもいい
多田くんは意外と鋭い
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の箒もなかった。多田くんの言うマイセルフワールドにステイしている間に戻してくれたらしい。

 クラスにはまだちらほらと人がいる。だが、もう教室を出て帰宅するだろう。私はこれから用があるので帰らないが。そういえば多田くんは何か部活に入っているのだろうか。それを聞いてみると、

 「なんも入ってないよ。だってダルイし。たまにチキンとバンジョーと遊んで帰るくらいかな。ん、もしかして一緒に帰りたい?」

 誰だチキンとバンジョーって。一方は明らかに弱そうだけど、バンジョーはなんだか番長っぽくて強そうだ。多田くんは言った。

 「チキンは照原でバンジョーは常盤な」

 照原くんは多田くんとよく一緒にいる不良で、常盤くんはアイドル研究部のオタクだ。なんてこった。予想が180度曲げられた。というか、照原と照り焼きの組み合わせは頑張り過ぎだと思う。

 多田くんは「それはどうでもいいわ」と言った。どうやら私にまだ何か言いたいことがあるようだ。正直、私はもうこの場を立ち去りたかった。

 「まだ何かあるの?私=マニュアル人間って早く分かっただけでも多田くんは凄いよ」

 「おお、サンキュ。ちなみにさ、三ツ橋って学校サボったことある?」

 「ないよ」

 「一度も?小学生から?」

 「うん」

 「お前ヤベえな」

 「多田くんは?」

 聞くまでもなかった。今月になってようやく話し始めたとはいえ、多田くんがどういう人間なのかは3年間で大まかには分かっていた。だが、つい話の流れで聞いてしまう。

 多田くんは、何が面白いのか分からないけれど満面の笑みを浮かべて言葉を吐き出した。

 「授業なんてどうでもいい、なくてもいい。だからどこかしらでサボってる」

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