16話
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原型を留めていないことに初めて気づいた。自然と力が入ってしまっていたことに驚き、溢れこぼれた中身をティッシュで拭く。
1度冷静になる千冬。まだ鬼一の本質が解放されるとは決まったわけではないし、そんなものが1人の人間の本質だと考えるつもりもない。なぜなら情報があまりにも少ないからだ。千冬は自分が考えるのは不得手だと理解している。これ以上考えても多分何も分からないだろう。とんでもないことを考えていることも自覚している。
だが経験上、こういうことは放っておいても良いことはない。
故に、千冬は携帯電話で連絡を図った。こういうことが得意でなおかつ口の硬い人間。しかも鬼一の近くにいる。素晴らしいまでに条件を満たした人間がいるのだ。ついでに言えば自分の頼みを断ることも考えにくい相手だった。
「私だ。今、大丈夫か?」
「珍しいですね。織斑先生が私にこうして連絡してくるなんて」
短いコール音が途切れ通話に応えたのはIS学園最強の看板を背負い、世界で2人目の男性操縦者の護衛についている更識 楯無だった。
「月夜についてだ。まだ生徒会室にいるか? いるならそちらに向かっても大丈夫か?」
楯無にとっては意外な言葉であったが断る理由もないし、その言葉を受諾した。
「ええ。……ちょうど私以外も戻りましたし大丈夫ですよ。それに、私も少し話したいことがあります」
―――――――――
「―――なるほど、織斑先生は鬼一くんに幾つかの顔。つまり人格があると考え、私たちが知っている鬼一くんは彼の本質から生まれた副産物でしかないと」
「そうだ。お前の報告とあの試合の映像を見直せば月夜が普通ではないのは確かだ。いくら特殊な環境にいたからと言って、あそこまで変われる14歳など存在しない。奴は自分も他人も切り捨てられる。あんなことが出来るのは人として何かが壊れている証だ。しかも本人はそれを覚えていないのだろう?」
束からの発言が発端であることは全て伏せたまま千冬は自分の考えを楯無に説明した。
楯無は千冬のような考え、つまり複数の人格があるとまでは考えてはいなかった。が、その考えは楯無も少なからず否定できないものだと思う。
―――戦いの才能、ね。確かにあの戦いはそう思わされるものね。
「覚えていないみたいですね。試合映像を見ても本人はその行動が当時の自分にとっては最善だと思ったのだろう、くらいしか考えていません」
楯無は鬼一とセシリアの保健室でのやりとりや自室での様子を思い出しながらそう話す。
「織斑先生のお話ですと、鬼一くんの人格は全てe-Sportsに没頭してから生まれたものであり、両親が存命であった頃は今とはまた違う人格だったのではないか? ということですか?」
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