暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
16話
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なる前の、両親が亡くなる前のそれまでの月夜は今とは違うんじゃないのか?

 束の発言がなければこの3つ目の顔が月夜 鬼一という人間のベースだと錯覚していたかもしれない。だが、この顔も戦いの才能から吐き出された歪んだ副産物でしかないと友人は話していた。ただ普段から出ている以上、プロゲーマー以前の鬼一をベースにして生み出た可能性もある。つまり両親がいた頃の鬼一だ。

 ―――両親の他界、か。月夜にとってはよほどのショックだったのか……?

 人の痛みなど、他者が理解することはできない。と千冬は思う。だが、鬼一は一般的な家庭で育っていたことを千冬は確認している。鬼一がIS学園に来る前に簡潔に政府が調べた情報には千冬も目を通しているからだ。小学生の頃に虐められて登校拒否になった、ということ以外は特に気になることはなかった。一般的な家庭、というのは千冬のイメージでしかないがそれは両親の、家族の愛情を充分に受けて育つことを指すことだと千冬は思う。 

 今見ているホームページはあくまでも、プロゲーマーになった後の鬼一のことしか深く掘り下げられていない。それ以前のことは、両親が亡くなったこと以外は誰も知らないのだろうか、多分、そこに月夜 鬼一という人間の鍵があるのではないかと千冬はそう思った。

 才能から生み出た副産物の顔が今の鬼一を構成しているのは間違いないだろう。

 そして、束が言った本質。その本質が全面に出る鬼一は一体どんなものなのか、興味よりも危険がどうしても上回ってしまう。そんなのが出てきたら一体どうなるのか? 男でありながらISという絶対的な存在を使える以上、放置はありえない。

 千冬は立ち上がり冷蔵庫から2本目のビールを取り出す。

 今は楯無が保護という形で側にいるが、果たしてこのままにしておいていいのだろうか? 千冬はそう考えてしまう。束の言葉を全て鵜呑みにしているわけではないが、極一部の人間以外を人間としてみない友人があそこまで言い切ったのだ。少なくとも無視していい話ではない。

 仮に、鬼一のその本質が表に出現した場合、千冬は例えどんなものであっても戦うことになれば自分は止められる自信がある。ISだろうが生身だろうが負ける気はしない。

 だが、鬼一の周りにいる人間はそんなことは出来ないだろう。片鱗ではあったがそれでもあの強さは普通ではない。狂気と異常さを内包した異次元めいたものだった。全て解放された時、それに太刀打ちできるのは常識という境界線を踏み越えた千冬や束のような一握りの存在のみだ。

 周りの人間の中には千冬の弟である一夏がいる。

 一夏が傷つくことだけは絶対に許すわけにはいかない。

 千冬はそれだけを胸に刻んで歩いてきたのだ。

 そこまで考えた千冬は、持っていた缶ビールが
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