16話
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―――抵抗することすら無意味と思われるほどの力を持った暴君を相手に、アウェーの地で暴力的なプレッシャーに耐えながら逆転一歩手前まで漕ぎ着け、そして、力尽き果てた姿を忘れることを筆者はできない。
―――圧倒的劣勢の中から、鬼のような執念と他のプロゲーマーから一目置かれるほどの抜群の集中力で数多くの逆転劇を生み出し続けてきた。
―――今の月夜 鬼一からは到底想像できないが、12歳の頃はプロゲーマーの中でも最弱と言われるほどだった。
―――元々将来性を重視され獲得された選手だったが、プロゲーマーになった直後に両親が他界。そのせいか最初の半年は成績が振るわなかった。
―――だが、月夜 鬼一は2度に渡り進化した。
―――死に物狂いでゲーム、競技人口2億人を誇るe-Sportsの世界に没頭し自身を磨き上げた。時には暴力事件に巻き込まれ大怪我をしても彼はe-Sportsの戦いに身を投じた。
―――12歳後半から13歳の前半、約半年で彼は第1集団まで上り詰め進化した。その頃からすでに一部では『鬼』と囁かれていた。
―――あまりにも情のないプレイスタイルからそう呼ばれたらしい。が、当時の動画や様子が分かるものはほとんど存在しない。今ほど注目されていなかったことが原因か。
―――彼なりに全力で戦い、全力でゲームに応えようとした。
―――そしてゲームもそれに応えてくれた。
―――気がつけば、彼はたくさんの人を惹きつけるほどの魅力的なプレイヤーにもう一度進化していた。彼とその周りにはいつもたくさんの仲間と笑顔があった。
―――『ゲームはいつだって戦いであり自身にとって救い』。ワールドリーグ決勝後に彼はそういった。
それはセシリアが見た同じホームページだった。それを隅々まで目を通して確認する。
余りにも情のないプレイスタイル。これは人を傷つけることに躊躇いのない顔なのだろうと千冬は考える。一夏との戦いで見せた1つ目の顔。
沢山の人を惹きつける魅力的なプレイヤー。これは一夏戦で見せた2つ目の顔。観客たちを虜に、自分の世界に引き込んだ鬼一の姿が千冬の脳裏に浮かぶ。
ギシリ、と音を立てて座椅子に深く背中を預ける。少しぬるくなったビールに口をつけた。
―――やはり微温いビールは人の飲み物ではないな。
『ゲームはいつだって戦いであり自身にとって救い』。これは3つ目、普段の鬼一の姿や発言に一致する。だがこの発言は公の場での最初の発言であるため、正確には分からないがこの発言以前に生まれた可能性も考えられる。少なくともこの顔はプロゲーマーになったその後に生まれたものだと千冬は考えた。
そして千冬は大きな疑問に直面する。
―――プロゲーマーに
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