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第三十七話 前線で一番苦労するのは誰なのです?
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アレーナ・フォン・ランディールは自室で一人唇をかんでいた。バーベッヒ侯爵反乱軍の士官一覧リストを検索していたところ、見覚えのある名前に出くわしていたのだ。もしやと思って念を入れたが、悪い予感が当たってしまった。
「アリシア・フォン・ファーレンハイト・・・・。こんなところにいたのね。しかも旗艦の幕僚にいるなんて・・・・」
このままではアリシアは反乱軍に加わった人物として処断されてしまう。そうなる前に救わなくては。・・・・多少無理をしてでも。アレーナがそう決断するのには、わけがあった。アリシア・フォン・ファーレンハイトは前世の頃、アレーナが自身で育てた教え子の一人だったからだ。
討伐艦隊がバーベッヒ侯爵領内シャンタウ星域に侵入したのは、帝国歴484年11月8日の事である。
再三の降伏勧告にもバーベッヒ侯爵一門は応ぜず、ついに戦端が開かれることとなった。
これに先立ってメルカッツ提督はアレーナ、そしてベルンシュタイン中将らを集めて会議を行っている。
「敵の士気は高く、侮れない。これはバーベッヒ侯爵一門が死を賭して戦いの覚悟を固めているからでしょう。ですが、ここに活路が見いだせます」
メルカッツ提督は開戦前であろうと、自宅の居心地の良い暖炉の前に座っていようと、パーティーの真っただ中であろうと全く同じ調子で話す。戦争というものについて彼の生活の一部になってしまっているようだ、などと意地の悪い連中はいうものだ。だが、アレーナには酸いも甘いも噛み分けたこの歴戦の名提督こそが、戦争というもののマイナス面を帝国軍人の中で一番知っている――達観できている――人だということがこれまで交わした会話の中でよくわかっていた。
「と言いますと?」
「フロイライン・ランディール。一門が死を賭して戦うと言っても、その指揮下にある兵士や指揮官はどう思っておるか、なのです。彼らにしてみればいかに一門に恩義を感じ、その下で勤務しているといっても、それは平常の職務内での事。皇帝陛下に反逆奉ることなど想定していなかったはず。少なからず動揺している者はいることと思われます」
「つまり、一門を降伏あるいは撃破してしまえば、麾下の兵士や指揮官はおのずと降伏なさる、というわけですわね?」
メルカッツはゆっくりとうなずいた。彼の話しぶりは落ち着いていて淡々としているが、その話には彼なりに入念に考察し、研究したのだということがしっかりとにじみ出ている。
「その通りです。我々がシャンタウ星域に侵入した時点で、まず敵の艦隊と一戦あると思われますが、今の前提を作戦に組み込んで戦術レベルに落とし込みます」
メルカッツ提督はシュナイダー少佐に宙域図形をしめすように促した。シュナイダー少佐がメインパネルにそれを映し出す。
「現在
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