2部分:第二章
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第二章
「そういうことなのよ」
「成程ね」
「あんな悪い男はいないわ」
すっと微笑んでみせた。声の中に隠し味みたいに含ませて。
「昼は真面目に働いてるけれどね」
「仕事は真面目なんだ」
「家でもそうみたいね」
彼の家庭のことは聞いている。何となく。
「優しい御主人でいい父親みたいね」
「けれど実はなんだね」
「浮気者で遊び人よ」
私にとってはそうだった。家じゃ子煩悩な父親らしい。けれど夜はどうなのか。ワインが好きでキザでダンスが好きな。そうした男だった。
その男のことを。私はさらに話した。
「しかも妖しくてね」
「妖しい男ねえ」
「そうよ。昼と夜は全然別の顔よ」
「そりゃいい。魅力的な男だよ」
声は私の話に楽しそうに述べてきた。
「是非一度会ってみたいね」
「そう思うのね」
「うん、一度ね」
「言うわね」
またすっと笑って述べる私だった。
「そんなこと言うのね」
「言うよ。何度でもね」
相手には余裕があった。それも完璧なまでに。
「そうさせてもらうわ」
「そうするのね」
「そうだよ。そう言うことが楽しいからね」
「悪い男の言葉ね」
「だって実際に悪いから」
相手はまた楽しげに話してくる。
「僕はね」
「その悪い男が何をするのかしら」
「誘惑だよ」
またはっきりと。一言で言ってきた。
「そうしてきているんだよ」
「誘惑ね」
「どう?これから」
話を本題に進めてきた。私が語り終えたのを見届けてから。
「一緒に飲まない?」
「私と貴方が」
「そうだよ。誰かを待っていたんだよね」
これまた楽しそうな言葉だった。
「だったら。どうかな」
「気が乗らないわね」
わざと。突き放してみせた。
「どうにもこうにもね」
「あれっ、そうなんだ」
「ええ、そうよ」
少し意地悪で言ってみせる。あえて。
「その通りよ」
「こういう言葉知ってるかな」
声は私が突き放したのを見て。それからだった。
私にだ。こう言ってきた。
「鳴かぬならね」
「鳴かせてみせよなのね」
「そうだよ、鳴かせてみていいかな」
「また面白いこと言うわね。それじゃあね」
私は相手の言葉を受けて。それでだった。
彼にだ。こう言ってみせた。
「何かしてくれるのかしら」
「はい、これ」
私の目の前に何かが来た。白いカウンターに赤いそれが来た。それは。
「カクテルね」
「どうかな」
「ジンね」
メインのお酒はそれだった。ピンキーフィズだ。中にはチェリーもある。
「私の好きなカクテルよ」
「あれっ、そうだったんだ」
「彼が私にはじめて飲ませてくれたカクテルよ」
私にカクテルを教えてくれたのも彼だった。そのはじめてのカクテルが今私の前にあるピ
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