2期/ヨハン編
K23 「助けて」
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と。フロンティアが出現した今、計画は最終段階。僕らが信じた通りに事が運ぶなら静観しても問題ないけど、ドクターが何をやらかすか分かったものじゃないからね」
喉元がきゅっと痛んだ。思い出したのは、泣いていた切歌。調たちを裏切ってしまったと吐露した、痛々しい切歌の表情。
人類を月の落下から救うため、正義ではなく悪の道を選んだ。善も綺麗事も捨てると決めた――そのつもりでいた。
なのに、今になって、親友の泣き顔が、こんなにも胸に突き刺さっている。
(どうしてこんなことになってしまったの? わたしたち、どこで間違ったの? 分からない。答えが見つからない。ねえ誰か、ねえ)
「……たすけて……」
――助けて。
ヨハンはその言葉を聞いた直後、調の小さな体を全力で掻き抱いていた。
「ヨハン?」
「やっと――言ってくれた」
――昔からギリギリの所で調はヨハンを頼らない。
調から甘えることは多々あったし、ヨハンも調を甘やかすのが好きだったからいい。だが何故か。切歌より脆く見える調なのに。マリアやナスターシャにも「助けて」とは言わなかった。
それは調の、善人面の大人に振り回された過去に起因するとヨハンは予想していた。
そうではない。ヨハンたちが言わせなかったのだ。
偽善にも嘘にも本気になれない弱い大人である自分たちを見て育った調が、どうして誰かを頼ることができるだろう。
「調が『助けて』って言ったら、どんなことをしてでも助けてあげるんだって決めてたんだ。何でもあげる、何だって叶えてあげるって」
やがて調は、ヨハンの背中に両腕を回した。こんなに小さな体で現実に立ち向かっていたのかと思うと、いとしくて、ヨハンはもっと強く調を抱き締めた。
「――わたしはわたしたちみたいな、虐げられる弱い人たちを増やしたくなかったの。マムとマリアの計画は、わたしの欲しい世界を創ってくれると信じてた。信じてたのに、マリアはいつも辛そうで、マムはどんどん笑わなくなって。きりちゃんが、泣いて……みんな、バラバラだよ」
「そうだね。みんなが悩んで、苦しんでる」
「間に合うかな? 今からでも、わたしはきりちゃんたちを助けられるかな?」
「分からない。分からないけれど、分からないってことは、間に合わせることもできるんじゃないかって僕は思うよ」
体を離す。ヨハンを見上げるマゼンタの両目に、迷いも不安もなかった。
「わたし、きりちゃんたちを救い出したい。だからヨハンの力も貸して。助けて、ヨハン」
「……ああ。何でもするよ。僕の調」
響は未来や翼ともども、管制で慌ただしいブリッジに立っていた。
隣に立つ未来はLiNKERやギア強制装着の後遺症もない健康体だと、二課の
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