第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
12話 争乱の足音
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こで帰ろうにも後ろで目を輝かせているヒヨリに退路を塞がれそうだ。
とはいえ、このまま立ち往生していても埒が明かない。先に通された客の顔触れを見れば、おおよその予測はたつだろうと考えて、グリセルダさんに案内してもらうことにする。
移動中は流石に部屋の多さに驚かされるが、大雑把な構造自体はあまり複雑ではない。エントランスの奥に台所を備えた巨大な一間があり、その周縁を囲うように大浴場やら個室やらが置かれるという大人数での利用を前面に押し出したような単調な構造。通路が無秩序な迷路のように入り組んでいることを除けば大型の高級物件だ。さらに二階は個室のみと潔く、水車を備えた離れには生産系スキル保有者が利用できる工房を外注で備えるという徹底ぶり。この拠点を買う為の金策にどれだけ駆り出されたか、今となっては思い出したくもないものだ。
………ところで、さっきからごくたまに涙目になって周囲を見回す少女と擦れ違うのだが、彼女達は一体何なのだろうか。俺がここに来た所為で戸惑っているのだとしたら、全く以て申し訳ないところである。
というか、数名はヒヨリと会話すると後に続いてくるのはどういうことなのか。
「それにしても、結構人数が増えたんだな」
「ええ、そうね。今じゃスカウトしなくても入団希望があるくらいだし」
「大したギルドだな。聖竜連合とか血盟騎士団の方が効率は良いんだろうけれどさ」
「強くなりたい人や恐がりな人には、そっちの方が合ってるのかも。でもここは《居場所》として在る場所だから………ホッとしたい娘が来るんじゃないのかな」
「ノルマは一切無いってくらいだもんな」
「そうね、だから居易いのよね」
それでも、全員が金策やレベリングを怠らないという。
この場所の為に、この城から抜け出す為に、誰もが無理のない程度に前向きに行動するからこそ、この場所は発展する。グリセルダさんの見解にも見て取れるように、偏にここが《居場所》だからなのだろう。ギルドとしての経営が最低限出来てさえいれば、それ以上は望まないという集団。人命第一、女性保護を謳うだけはある。これについては感嘆せざるを得ない。
「ま、顔触れとかはヒヨリちゃんやティルネルちゃんあたりが詳しいかもね。ヒヨリちゃんなんかはフレ登録で全員網羅してるわよ。よく遊びに来てるし」
「………あ、違うんですよ? もし機会があればリンさんもお誘いしようと思ってましたし、その………」
「いや、別に構わない。その間はレベリングをさせてもらっているからな」
レベリング。
その内訳に《秘蝕剣》の強化も含まれてはいるのだが、こればかりは口が裂けても言えない。
他に習得したという情報がない以上は、例え身近な相手でも公表は控えておくべきだろう。唯一の目撃者た
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