第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
12話 争乱の足音
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には海の名残だった層もあったのだが、年月を経て海水が蒸発した結果《一面が塩の結晶で覆われた白の砂漠》というものもあった。砂粒に相当する塩の粒子にはご丁寧に味覚エンジンでの際限が為されていて、大鷲型モンスターの突風攻撃で文字通り辛い思いをさせられたものだ。一方で塩も取り放題という家計に優しい一面もあったのは補足しておくべきか。
「えー、じゃあ………みずうみ、水浴?」
「どうあっても水に浸かりたいのな」
「夏だもん! そうだ、水着買わなきゃいけないよね! ティルネルさんも一緒に買いに行こう!!」
「………水着は、その………」
「………………とにかく、どのみち続きは中に入ってからだ。いいな?」
ともあれ、相棒は相も変らぬマイペースぶりだ。理由は定かではないが、目に輝きを失ったティルネルには心傷を察するとしか言い様がない。
こうしているうちが一番平和を実感していられるのもまた事実ではあるが、それでも余所様のギルドホームの前で延々と続けるような話でもない。
ましてやこの炎天下、装備もネクタイの赤以外は黒系統の俺は望まずとも光を吸収するから暑くて敵わない。一刻も早く屋内に逃げたい。しかし弱音を心のうちに秘めつつ、先陣を切って玄関を開く。流石に空調設備を期待することは出来ないが、屋内を循環する風だけでも十分に涼がとれる。これだけでも少しだけ生き返った気がするのだから、我ながら安上がりだ。
「いらっしゃ…………あらあら?」
そして、玄関を開けた先。エントランスで俺達の訪問に一早く気付いたあるギルドメンバー――――三角巾に割烹着という、いかにも旧時代の主婦というような出で立ちのグリセルダさんは意外そうに首を傾げる。俺自身がこうしてこのギルドホームに足を運ぶこと自体が珍しいケースである為に、この反応も已むを得ないのであろうが。
「お友達まで一緒だなんて珍しいじゃない、どうしたの?」
「クーネに呼ばれただけだ。要件も聞かされてないから、不安だけどな」
「そう? じゃあ、他のお客さん達と同じ用事なのかも」
「どういうことだ?」
「んー? どういうことって聞かれても、最近はクーさんも忙しそうだし、難しい顔してるし………その事についてはサブリーダーの娘達にはお話ししてるみたいなんだけどね?」
「情報統制のつもりか?」
「どうなんだろう………私は、自分に声が掛かるまでは知らないフリをしよっかなって思ってたから」
情報漏洩を遮断して、上層部でのみ何か行動しているということか。
とはいえ、かつてはギルドを率いていたグリセルダさんにはある程度判るところもあるのだろう。察するに、不穏な翳りが見えなくもないが、ここまで出向いたからには引き返すのも後ろ髪を引かれる気がする。というより、こ
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