第七話 仮面舞踏会だよミューゼル退治 そのB
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は縁がない。そんな父上たちの談合から出てくる案はことごとく、なんらかの危険性を孕んだものだった。
農奴として領地の辺境を開拓している叛徒の捕虜から技能を持った者を召し出す。
友好関係にあるファルストロング一門あるいはクロプシュトック侯に頭を下げて家臣を譲り受ける。
フェザーン商人を介して人を調達する。
どれもこれも、小才子が考えつきそうな策、敵対する家に嗅ぎつけられれば一門の滅亡に直結しかねない、あるいは弱みを握られ従属を強いられる、最も良くても将来の取引において不利な条件を呑まされるなど少なからぬ打撃を被る下策であることが俺にも分かった。
当然、家宰様は首を縦に振らない。
『これはもしかして、好機なのか?』
将来の郎党候補、給仕役としてブルーノと二人立ち働きながら、俺は好機が訪れたのを感じていた。
どうやら父上をはじめとする家宰様以外のマールバッハ家の主だった面々はお家が再興するまでは事をうまく運べても、宮廷でのし上がっていくには今一頭の回転や用心深さ、繊細さが不足しているようだ。
ここで俺が騎士会館の叙爵予定者リストや紳士録、マトリクスから手にした情報──単なる原作知識ではない、大半が生きた情報からなるキルヒアイス、ミッターマイヤーそしてメックリンガー家の調査書──を提供すれば、危険視されて潰される可能性も出てくるだろうが、うまくやれば単なる将来の郎党候補ではなく一門に列する可能性もある重臣候補にまで扱いが上昇するかもしれない。あるいは近衛兵や宮中勤めに推挙してもらえるかもしれない。
『さあ お前の出番だぜえ うまい芝居を 見せてくれよ』
『言われる までも ねえよ』
壁に掛けられた名画の人物に乗り移って現れた悪魔──俺が二重の意味で手出しできないのをいいことに、ゆかいなしもべたちと一緒に踊りながらハンドシグナルでメッセージを送ってくるのみならず、俺を笑わせようと道化役者のようなポーズをとったり表情をしたりと迷惑行為の数々をしでかしている──に表情筋の微妙な動きだけで答えると、俺は意を決して言葉を紡ぎだした。
「家宰様、身元の確かな園芸の愛好家なら僕に…いえ、私に少々心当たりがあります」
「…アルフレット君。君は事の重大性を分かっているのかね」
口をはさんだ俺に家宰様の厳しい視線が注がれる。子供が口を出すことではないと視線は雄弁に語っていた。
「騎士会館の叙爵予定者表の中にあった名前、フォン・ワイツからいただいたお手紙に出てきた名前です。お家からすれば取るに足らぬ平民とはいえ、下賤の輩の中では人がましいと言える…言えましょう」
嘘は言っていない。ワイツ秘書官の手紙にあった人名は俺が意図して引き出したものではあるが。それでも嘘ではない。騎士会館の叙爵予定者表は公の物、嘘偽りの具に使えようは
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