第七話 仮面舞踏会だよミューゼル退治 そのB
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「てええええーーー!!」
数分間に及ぶ対峙の後、裂帛の気合とともに撃ち込んだ訓練用の剣は相手の受けに見事に迎撃されて跳ね飛ばされ、くるくると回転しながら床に落下した。
「グリルパルツァー候補生!」
剣を突きつけられた俺に教官の叱咤の声が飛ぶ。
「はい!」
「対峙から攻撃に移る時はもっと素早く決断し、大胆に動くのだ。体が恐れているぞ。恐怖をねじ伏せろ」
半ばは反発を感じつつも、俺の理性の部分は教官の指導が正しいと理解していた。
人間は精神のみで成り立つものではなく、精神は肉体から多大な影響を受ける。当然だ。精神は肉体を駆動するプログラムの一部、いわば運用ソフトである。プログラムの根幹いわば、『肉体の意志』『遺伝子の意志』に支配される、影響されることは大いにある。
一年前ミューゼル家潰しの陰謀の第一歩を踏み出そうとしてこの恐るべき事実につまづかされた時から、俺の頭脳から『肉体の意志』『遺伝子の意志』を軽んじる考えは消えていた。
『だんだん原作のグリルパルツァーに近づいてきている』
もっと精神力を鍛えて、肉体をねじ伏せなければ。第二次ランテマリオ会戦においてミッターマイヤーの攻勢を引きこんで戦線を瓦解させるプランを実行する機会を逃した原因、小才子の小才子たる所以の臆病さが芽吹き始めているのを自覚し、俺は内心舌打ちした。このままでは、ラインハルトを潰すどころか、マールバッハ一門の一員としても芽が出ないまま終わってしまう。
『頼むぜ大帝陛下、俺があんたに近づけるように見守っててくれよ…』
教官に、そしてルドルフ大帝の肖像に心底の底から頭を下げて列に戻りながら、俺は自主訓練の瞑想の時間をどれだけ増やすべきかを、そして増やせるかを検討していた。
帝国暦四七五年。
俺は一介の幼年学校生徒としてまずい食事と厳しい訓練に耐えて学んでいる。
主観的には。
そう、主観的には。
ミューゼル潰し計画を『肉体の意志』この場合は若さと衝動に粉砕されてから二年生の春の休暇を終えて寮に戻るまでは、確かにそうだった。表向きの自分の計画のために騎士会館から借り出した数人の『大帝の騎士』の人物伝の写本と家宰様にいただいた紹介状、マールバッハ家とロイエンタール家の紋章の入ったレターセットを鞄に入れて寮に戻ったときも、扱いに変化はなかった。ホルスト・ハーネルという将来殺してしまいそうな名前の平民のルームメイトと同室で寝起きし、幼年学校のカリキュラム、軍事科目──座学はもちろん素手での格闘技、戦斧術や剣術、弩弓術をはじめとする白兵戦技や射撃術そしてフットボールなど普通科の体育には特に力を注いだ。もっとも、適度に手を抜くこと門閥貴族の子弟に勝ちを譲ることは忘れてはいない。幼年学校はいわば軍事教育も行う貴族学校であり、帝国騎士
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