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八神家の養父切嗣
五十七話:正義の敵
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うもなく―――泣き出したいのを堪えるのだ。

「はい、私の気持ちは変わりません。主はやて」
「……主が命令してもか?」
「申し訳ありません。主の命令であっても切嗣を一人にすることはできません」

 申し訳なさそうに頭を下げるアインスにツヴァイは困惑する。自分達の役目は主はやてを守り幸せにすることに他ならない。そして主の命令は忠実にこなすことは至上命題に等しい。それを破るなど魔道の器である自分には考えられないことだ。故に問いかける、自身の先代が主の命に背く理由を。

「リインフォースT、どうしてそこまでするんですか?」

 ツヴァイの質問に一瞬キョトンとした表情を見せるアインス。しかし、すぐに何がおかしいのかクスクスと笑い始める。そのあまりにも場違いな乙女のような表情に今度はツヴァイの方がポカンとした表情になる。そんな彼女に向かいアインスは慈愛に満ちた声で言うのだった。

「お前も人を好きになれば分かるさ」
「……はやてちゃん、どういうことですか?」
「気にせんでええよ、ただの惚気やから。それも特大の」

 かつての部下が自身の父にぞっこんという状況に曖昧な表情になりながらはやてはツヴァイの頭を撫でる。どうやら、彼女は見つけたのだろう。かつての主以外に自分の命を懸けてでも守りたいと思える存在に。その事実が嬉しいからこそ養父にはきつめの視線を向ける。

「おとん、これだけ愛されとるのに答えは変わらんのか?」
「……アインス、ユニゾンを頼む」
「答えんか。ええよ、それなら私も今までの鬱憤も込めておとんを叩きのめすわ。それから、おとんに本当の願いを気づかせたる」

 最大限の愛を示されているにもかかわらずそれを無下に扱う切嗣。その様子にはやてももはや話し合いは不要と悟る。十年間溜め続けてきた文句は山のようにあるがまずは叩き潰してから言えばいいだろう。

「リイン、ユニゾンいくで!」
「はい! マイスターはやて!」

 親と子が争い合う。それは酷く悲しいことだろう。しかし、人は時にぶつかり合わねば分からないこともある。その関係が近ければ近いほどに言葉では伝えることができぬ想いが存在する。故に二人の祝福の風は想いを互いに届けるためにその全力をもってして追い風を送るのだ。

『ユニゾン、イン!』





 自動防御態勢に入ったゆりかごの中を守護騎士達となのはとヴィヴィオが走っている。艦内は高濃度のAMFが巡らされているために飛ぶことも通信を行うこともできない。そのためになのはとヴィヴィオは危うく取り残されるところであったが獣の力を使ったザフィーラに間一髪で救出されたのだ。

「外の様子はどうなってるか分かりますか、シャマル先生?」
「私達もこっちに来てからは分からないけどまだ戦いは終わってないと
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