五十七話:正義の敵
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は人類というカテゴリに属することはできないのだ。
「私はこの子も騎士達も人間として、家族として扱っとる。でも、この子達は厳密には人類やない。それにペットを飼ってる人は死別を何度も経験せなあかんこうなる。植物を愛でとる人も枯れたら悲しむ」
「そ、それら全部も不死化すれば……」
「範囲を広げていったらおとんはこの世の全ての物を不老不死にせなあかんこうなるよ?」
明確に人類でない以上アインスを含む守護騎士達は不死化の対象に入らない。その他にもペットの犬や猫なども入らない。勿論、入れようと思えば入れられるだろう。だが、範囲はネズミ算式に膨れ上がっていく。全ての人が愛する者が同じでない限りは無限に広がっていく。そうなれば、結局この世の全てを永久に壊れないものにしなければ全ての人から悲しみを取り去ることはできないだろう。
「仮になんもかんも終わらんようにしたら、それは何一つ変わらんってことや。
そんな世界―――世界が滅びたのとどこが違うん?」
何一つ壊れない。何一つ変わらない。そのような変化のない世界は何もない世界と同義だ。全てが滅びた後だと言われても誰も疑いはしないだろう。消費という概念がないのなら何一つ生み出すこともできない。新たな命が生まれることもない。愛も希望も夢もない、あるのはただ存在していることすら忘れた無機的な命だけ。これの一体どこが―――救済なのだろうか?
「おとんは世界を滅ぼしたいん? それとも人間だけを救って―――また家族を殺すん?」
はやての言葉が切嗣の心を抉る。事実だ、何一つ反論することなどできない正論だ。結局のところ彼が真に求める救済とはかけ離れたもの以外には何も残らない。弱者を救えず、世界を停滞という名の滅びに導き、そのために再び家族を犠牲にする。これを自滅と言わずになんというのだろうか。
自殺ならば誰も巻き込むことなく一人でやってくれと誰もが言いたいような事柄だ。だが、それでも。本人すら気づかない心の奥底には彼を前に進ませる願いがあった。それは世界を救いたいという崇高な願いでもなく、幼き頃の憧憬でもない。ただ、罰を求めるだけだった。
「それでも…僕は…僕は…ッ! ―――僕のエゴを貫くッ!!」
「……何が正義や、ホンマに子供みたいに意地っ張りやな。なあ、アインスはどうなん? これでもまだおとんに味方するん?」
心底呆れたような表情をしてはやては今度はアインスに問いかける。切嗣はアインスに顔を向けることもしない。しかし、それは先ほどのように恐怖で見れないというわけではない。見る必要もないほどに信用しているのだ。彼女は必ず自分の味方になってくれる。例え、最愛の人に殺される未来がすぐそこにあるとしても。だから、切嗣の心はどうしよ
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