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RSリベリオン・セイヴァー外伝 「オオカミと巫女]
オオカミと巫女
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感を感じるとは言えども、彼女のことが好きだからそれほど嫉妬などは感じたことはない。優しいし、いつも俺を日常的に助けてくれる。
――昨日のことといい、今夜はそれに関係したことを話しに来るのかな?
下心などは出ていなかった。そんな欲情よりも、今後の関係がどうなってしまうのかという思いのほうが強かった。
祭りの準備は夕暮れ時には大方終えて、あとは本番を待つばかりである。
「あ、鎖火さん?」
と、俺が片づけを終えて物置小屋から出てきたところを櫻が表れて、俺の前まで駆け寄ってきた。
最初は敵意むき出しの彼女だったが、今ではそれほど悪くはなく、仲のいい男友達という感覚で見てくれている。
「朋絵ちゃん?」
「さっき、弥生先輩から声をかけられたんですか?」
「え? まぁね……」
「別に、悪い話じゃないみたいですから安心してください」
「え?」
「それじゃ! 私はこれで……」
と、それだけ言い残すと櫻は先に持ち場へ戻った。
「何なんだ……?」
だが、別にせずに俺はこのまま作業を再開する。

祭りは、夕暮れどきに始まった。幾店もの屋台が境内に並び、訪れる客を招いて夢中にさせる。
俺も、ようやく手伝いから解放されてくたくたになったところを、村長の爺さんたちに誘われてやや晩酌を迫られた。
軽く御猪口の酒を啜り、隙を見ては逃げ出してきたところだ。この村の老人たちはみないい人ばかりだが、酒が口に入ると途轍もなく盛り上がるから、酔ってほんわかな感覚になるよりも逆に疲れてしまう。
だから、俺は隙を見て逃げ出してきたのだった。それに、前々から楽しみにしていた弥生の舞もこの目で見ておきたいのだ。
とりあえず、夜店を何件か回って時間をつぶして、このまま暗くなるのを待った。
あたりが夕闇に沈むころ、雅楽の音色と共に舞台から一人の巫女の弥生が立ち、華麗な舞を周囲に披露した。
――綺麗だ……
神聖な装束に身を包んだ彼女の舞は、見るものを魅了することは間違いない。その舞を見とれているうちに時間はあっという間に過ぎ去っていく。

「ふぅ〜祭りは疲れるな?」
訪れに来る客たちならともかく、準備に徹する者にとっては重労働であった。
疲れ切った体を、湯船に沈めて入浴を済ませた後、俺は寝間着に着替えると自室へ帰った。
布団を敷いて明日に備え今日は寝ようと思ったのだが、今日の昼に弥生が言っていたことを思い出してそのまま置き続けていた。
ちょうど、八時になるところだからもうじき来るだろうか?
八時になるまで、俺は適当にゴロンと布団の上に横たわって眠くならないように気を付けながら彼女が来るのを待ち続けた。
「ろ、狼君……?」
後ろから弥生の声が聞こえた。丁度、八時ジャストだ。障子の戸を引いて弥生が入ってきて、俺も起き上がって彼女のほうへと振り向いた……
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