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RSリベリオン・セイヴァー外伝 「オオカミと巫女]
オオカミと巫女
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わないとな?
何度も深呼吸をする俺は、落ち着いて境内を見渡した。すると、境内の片隅で何やら男女の会話が聞こえてくるではないか?
男女の内、男は見知らぬが対する女は弥生の声だった……
「あの……ですから、大変申し訳ありませんが……このたびのお見合いは御断りさせていただきます……」
「どうしてです? 僕は、こんなにもあなたのことを愛しているんです。その気持ちは本物だ!」
「本当にごめんなさい。でも……」
「……また、御伺いに上がります。それまでにどうか考え直しておいてください!」
男は不機嫌になって、彼女に背を向けるとそのまま境内から立ち去っていく。
「……?」
男が、俺の方へ歩いてくる。真正面から見ていただけでわかりずらかったものの、その素顔はかなりの美青年であった。背も俺よりスラッと長く、スーツ姿がとても似合う男である。
しかし、男は俺と目があった途端にさらに機嫌の悪い態度をとりだした。
「何だね……? 何を見ている!?」
「あ、いや……」
突然絡んでくるから俺は言葉に詰まった。
「フンッ……下衆が!」
と、男は俺をにらみつけた後、また歩きだして鳥居をくぐって石段を降りていった……
「な、何だよ? アイツ……!」
八つ当たりされたかのようで、実に気に食わない奴だ……
「……あ、狼君!」
と、俺に気付いて弥生が元気よくこちらへ元気に駆け出してきた。巫女装束は一般的な緋袴をはいた普通の装束だったので、やや残念だ……
「弥生?」
「いらっしゃい! 暑かったでしょ?」
「あ、ああ……」
急に親しくする彼女に、俺は少し驚いた。いつもはこんなにはしゃぐような娘じゃない。
まるで、嫌なことから解放されてはしゃぐ子供のようだった。
「早く上がって? お茶出すから……」
俺は、社務所にある来客用の和室へ案内され、菓子と冷たいジュースを頂いた。氷が入ったジュースは、俺の乾いた喉を潤してくれる。
「この八月中、お世話になるよ? いろいろと迷惑かけちゃうと思うけど……」
汗まみれの髪をボリボリかきながら、それを挨拶にして彼女に言う。
「ううん? お姉ちゃんが蒼真さんのところへしばらく行くから、私も寂しかったところなの。狼君が居てくれると、心細くないからよかった!」
「……」
――やはり、あの男と何か関係があるのか?
先ほど境内で酷く当たってきた男を思いだした。俺はつい気になってしまい、おもわずそのことを彼女に尋ねてしまう。
「弥生……あの、先ほどの人は?」
「え……?」
「さっき、神社で変な奴とすれ違ったけど……?」
「……もしかして、工藤さん?」
表情を曇らせて、弥生は恐る恐る尋ねた。聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか? 俺は、そんな彼女を見て慌てて詫びた。
「すまん! 嫌なこと聞いたか?」

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