巻ノ四十八 鯨その一
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巻ノ四十八 鯨
幸村主従は夜は船の中で干し魚を口にしつつ酒を楽しんでいた、船頭が用意してくれたその酒をである。
十一人で車座になり飲んでいた、そうして十勇士達は主に口々に言った。
「いや、幾ら飲んでもいいとは」
「船乗り達も休んでおる時はそうとは」
「また凄いですな」
「それだけ酒を積んでおるのですか」
「船の底にじゃ」
幸村はその酒を飲みつつ彼等に答えた。
「いkるあでもな」
「酒の樽がある」
「それで、ですか」
「我等も飲んでよい」
「そうなのですか」
「そうらしい、しかもこの酒はな」
彼等が今飲んでいる酒についてもだ、幸村は話した。
「随分強い焼酎じゃな」
「ですな、焼酎でもです」
「随分と強いものです」
「普通の酒よりずっと効きます」
「かなり酔いますな」
「うむ、拙者も御主達も船酔いはしておらぬが」
見れば誰もそれにはなっていない、至って平気である。
「しかしな」
「この酒にはですな」
「すぐに酔ってしまいそうですな」
「どうにも」
「そうじゃ、酔ってしまってな」
そうしてというのだ。
「明日の朝辛くないようにせめばな」
「どうにもですな」
「我等はよくそうなりますな」
「酒については」
「二日酔いになるとな」
そちらの酔いについてはだ、幸村はこう言った。
「一度なるとな」
「辛いですな」
「どうにも」
「特に船では風呂もありませぬ」
「近くに川もありませぬ」
「うむ、そうした場所で酒を抜くことが出来ぬ」
だからだというのだ。
「酒が抜けるまでずっと我慢するしかない」
「頭が痛いことに」
「そのことについて」
「そうじゃ、海に飛び込もうものなら」
瀬戸内のだ、そうすればというと。
「鮫の餌じゃ」
「ですな、そうなりますから」
「海には飛び込めませぬな」
「それはとてもですな」
「するものではありませんな」
「そうじゃ、だから酒は程々にな」
二日酔いにならぬ位にというのだ。
「そうしておこうぞ」
「では程々で飲み終え」
「そして寝て、ですな」
「明日に備える」
「そうすべきですな」
「そうしようぞ、酒は飲んでもな」
それでもと言うのだった。
「過ぎぬ様にしてな」
「では」
「あと少し飲み」
「それ位で止めましょうぞ」
十勇士達も幸村の言葉に従ってだ、酒は徹底的に酔わぬ位で止めて酒と肴を収めてから飲んだ。そしてその次の日の朝。
船の中から出て来た主従を見てだ、船頭は幸村の顔を見て笑って言った。
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