4部分:第四章
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第四章
次の日、事務所で仕事に向かう前にだ。彼は小津に事情を話してもらった。昨日のそのだ。チャリティーの仕事のことをだ。
「実はね」
「実は?」
「昨日の仕事はある人の御願いで実現したんだよ」
「小津さんですか?マネージャーさんですか?」
「いや、僕達じゃないんだ」
彼でもだ。マネージャーでもないというのだ。
「別の人がね。御願いしてくれたんだよ」
「っていいますと」
「ほら、学校にいたじゃない」
そのだ。チャリティーを開いたその学校だというのだ。
「あのショートヘアの人ね」
「ああ、あの」
それを言われるとだ。すぐにわかった亮太だった。
「あの人ですか」
「あの学校の先生でね。木更津香っていうんだ」
「木更津さんですか」
「凄くいい人でね。あの子達の為にいつも働いているんだ」
「その人が昨日のお仕事を」
「そう、実現させたんだ」
こう亮太に話すのだった。
「うちの事務所と何度もお話してね」
「そうだったんですか」
「だから。僕達が実現させたんじゃないんだ」
亮太にその事情を話す。
「あの人がなんだ」
「成程、それでああして」
「うん。それでね」
「それで?」
「よかったらだけれど」
前置きしてからだ。亮太に対して話すのだった。
「またあの仕事受けてくれるかな」
「あっ、またあそこでなんですね」
「うん、どうかなそれは」
「喜んで」
返答はこれしかなかった。一も二もなくだ。
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね。宜しくね」
「はい。それにしても」
「それにしても?」
「立派な人ですね」
そのだ。香のことをだ。彼はこう言ったのだ。
「木更津さんって人は」
「そうだね。いつもあの子達のことを考えているから」
「身体の悪い子供達のことを」
「あの子達はとても苦労してるんだ」
身体障害者の子供達のことだ。彼等が苦労していることは最早言うまでもなかった。
「身体が悪いだけじゃなくてね」
「差別も受けるからですか」
「だからなんだ。けれど木更津先生はね」
「その子達に対して優しく接しているんですね」
「優しいだけじゃないんだ」
それに留まらないというのだ。彼女はだ。
「その子達の目線になって。それで子供達が気分を悪くしないようにそっと気遣ってね」
「働いているんですね」
「そういう人なんだ。本当にできた人だよ」
「成程、そこまでなんですか」
「そういう人だから。昨日の仕事も実現したんだ」
小津は自分のことは話さなかった。彼の功績もあったのだがそんなことはどうでもよかった。それでこう話をするのだった。
「そういうことだったんだ」
「わかりました。それじゃあです」
「またね。その仕事をね」
「受けさせてもらいます」
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