14.『ありがとう』
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き渡るだけだった。
ひょっとしたらと思って和室に向かう。和室の襖を開けて電気をつけるが、やっぱりそこに鈴谷はいない。あるのはムカつく爺様の遺影と、摩耶さんそっくりな婆様の写真だけだ。
僕の頭に、鈴谷のムカつく笑顔が浮かぶ。家中を探しまわるが、鈴谷の姿はない。もう一度会いたくて……またあの笑顔が見たくて、懐中電灯と虫除けスプレーを持って外に出た。そのまま全速力でホタルのポイントまで走ったが……
「う……」
時間が遅く、ホタルはもうみんないなくなっていた。
「鈴谷!!」
そして当然だけど、鈴谷はいない。LINEでメッセをいくつか飛ばす。
『鈴谷! どこ行った!』
『返事しろ! どこにいるのか教えろ!!』
どうしたんだよ? いつも返事早いじゃんか……僕がメッセ飛ばしたらすぐ返事くれたじゃんか……なんで返事してくれないんだよ……? 既読すらつかないってどういうことだよ?
思いついた。鈴谷はいつも僕が爺様のアカウントで艦これを始めたらタイミングよくメッセをくれた。今回もきっとそうだ。僕は家に急いで帰り、居間に置いてある元爺様、現母ちゃんのものであるノートパソコンを使い、D◯Mにログインしようとした。
「う……」
ログイン出来ない。弾かれる。
「なんでだ?!」
何度も何度もログインを試行する。……繋がらない。ログイン出来ない。
「なんでログイン出来ないんだよッ!!」
リターンキーを叩く。ログイン出来ない。リターンキーを叩く。ログイン出来ない。クリックする。ログイン失敗。メールアドレスとパスワードを入力し直す。やはりログイン出来ない。メールアドレスを見直す。間違ってない。パスワードのコピペを見直す。間違ってない。もう一度だけリターンキーを叩く。ログインは出来ない……
フと思いついた。D◯Mの会員規約のページに接続し、該当箇所を探した。
「第十五条……当社による解除……ここだ」
これは、D◯M側でアカウントを削除してしまう場合について書かれた項目だ。注意深く……逸る気持ちを抑えて読み進めていく……。
「……!」
……見つけてしまった。もう鈴谷には会えない気がした。鈴谷だけではない。僕を悩殺した鹿島さんにも……家族の心を盗んでいった妙高さんにも那智さんにも……あのムカつく笑顔の涼風にも……僕にそうめんをぶっかけた五月雨ちゃんにも……焼き肉をめぐってずっと喧嘩ばかりしていた加賀さんと瑞鶴さんにも……僕はおろか鈴谷にまで慈悲の心を見せていた大天使オオヨドエルにも……。
「マジかよ……ッ!!」
若い頃の婆様に瓜ふたつな摩耶さんにも、きっともう会えない。
「返事しろ鈴谷ッ……嘘だろッ?!!」
鈴谷にもきっともう会
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