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忘れ形見の孫娘たち
14.『ありがとう』
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かに楽しい生活をここのみんなと過ごしていたかを知ることが出来た。僕はもう疑問はない。大丈夫だ。

『鈴谷』
『ん? どしたの?』
『ありがと。鈴谷のおかげで、ここに来ることが出来た』
『にっしっし……まぁこの鈴谷を崇め奉るがいい!』

 鈴谷が誇らしげに腰に手をやろうとしたその時だった。……僕は気づいてしまった。齢九十にして男性ホルモン過多の、爺様のあの視線に。

『ところでお前らさ』
『ん?』
『提督どしたの?』
『付き合ってんの?』
『なぜッ?!』
『いやだって、ずっと手繋いでるだろ?』
『ぁあ、そういえば』

 僕と鈴谷が同時に手を上げる。僕達の両手は、しっかりと繋がっていた。入るときは一回手を離したはずなんだけどな……もういつ繋ぎ直したのかよく覚えてない。

『どうだったよ鈴谷? 俺が言った通りコイツ即落ちだったろ?』
『全然。つーか鈴谷たち付き合ってすらないし』
『かぁ〜……和之、爺様は情けないぞ……こんないい女が目の前にいて……』

 そう言って爺様は頭を抱えてもじゃもじゃ線を生成していた。いやいや別に付き合わなきゃいけないってことはないでしょうよ。繋いだ手を離すのはなんだかイヤだけど。

『でも手を離さないあたり、お前も満更でもないんだろ? ただ恥ずかしがってるだけだろ?』
『えっ……かずゆき、そうなの?』
『そんなことはないっ』
『いい加減素直になれや和之』
『そうだーかずゆきー!』
『だいたい爺様! 婆様そっくりな摩耶さんをレベルキャップ……ケッコンカッコカリだっけ?! してるって摩耶さんと婆様に失礼じゃないかッ!!』

 そうだ! 婆様にそっくりだから摩耶さんを選ぶだなんて、摩耶さんに失礼じゃないのか爺様!! なんて文句を言って話を逸らそうとしたら……爺様は急に僕のそばに駆け寄り、肩を抱いて耳元でポソポソと言い始めた。

『いや実はな和之』
『なんだよっ』
『あいつ多分、お前の婆様だぞ?』

 ほわっつ? ついにうちの爺様は血迷いやがりましたか?

『いや、だってあいつのワシャワシャ、俺が若い頃婆様に食らったワシャワシャそのまんまだったぜ?』
『いやそれだけじゃ理由にならないでしょ爺様ー……』
『声や背格好も話し方も何もかもアイツそっくりだし……』
『だって世の中には三人そっくりさんがいるっていうじゃん……』
『初対面の時も第一声が“おう! ひこざえもん!!”だったし……』

 何そのゾクッとするような挨拶……ヤバい……摩耶さんイコール婆様説はなんだか現実味を帯びてきたのか……?

『それにさっきも和之のことをさ。“他人の気がしない”って言ってたぜ?』

 ここに新たな謎が浮上した。摩耶さんの正体は婆様なのか……なんて爺様と一緒に冷や汗をか
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