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忘れ形見の孫娘たち
14.『ありがとう』
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「行けるよ? 鈴谷とかずゆきが一緒なら」
「でも……」
「ほら行こ?」
「……」
「目、閉じて」

 そんな鈴谷の雰囲気に飲まれ……周囲を飛び交うホタルたちに見守られながら、僕は鈴谷に抱き寄せられたまま両目を閉じた。世界が閉じ、僕が感じられる外界は、周囲の音……もっと言うと鈴谷の声と、鈴谷の温かさだけになった。

「耳、澄ませてみて……」
「ん……」
「何か聞こえる?」

 言われたとおり、鈴谷の声以外の音を注意深く聞いてみる。

……

「んー……特に何も」
「もっとよく耳すませて」

…………

「鈴谷のドキドキとか?」
「かずゆきのえっち」

………………

『…一艦…! 帰…し……たー!!』
『あれ?』
『もう少し……』

……………………

『ご…労さー…! 順…に…渠して…て…れー!!』
『え……』
『ほら……』

 少しずつ少しずつ、周囲がガヤガヤと騒がしくなってきた。笑い声や命令、雑談……そんな楽しそうな女の子たちの声が僕の耳に届いてきた。喧騒は次第に大きくなり、まるで別の場所にいつの間にか移動していたのかと思えるほど賑やかになってきた。

『あれ……』
『来れた……』

 まぶたを開けなくても分かる。今僕等がいるこの場所は、夜ではなくて昼だ。鼻に届く空気が変わった。まるで少年時代の学校の校舎のような建物の匂い……乱暴にドアが開かれる音。僕らを素通りし、足早に去っていく足音。

『もう大丈夫だよ。目、開けて』

 鈴谷に言われ、目を開く。まるで学校の校舎のような建物の中に僕と鈴谷はいた。いつの間にか鈴谷は僕の首から腕を離し、僕と手を繋いで隣で胸を張って立っていた。

『……ここは?』

 告別式で見た子たちが忙しそうに……でもとても楽しそうに、笑顔でガヤガヤとひしめき合っている。窓から入るお日様の光が眩しい。おかげで周囲が明るくキラキラと輝いて見える。

『鎮守府!』

 窓の外を見る。外は気持ちいいぐらいの晴天。頭にうさぎの耳みたいなカチューシャを点けた子が『みんなおっそーい!』と言いながらものすごいスピードで駆け抜け、その後をセーラー服を着た小さい子たちが『お、追いつけないのです……』『でもここで追いつくのがー! 一人前のれでぃー!!』と必死に追いかけていた。

『ここが? 鈴谷が過ごしてるところ……?』
『うん!』

 かけっこをしている小さい子たちから少し離れたところで、和服姿の落ち着いた雰囲気の人がたくさんの洗濯物や布団を鼻歌交じりに干しているのが見えた。干された布団の上には小さい人たちが座ってて、小さな布団叩きで楽しそうに布団をポンポン叩いている。

『鈴谷! なんか小さい人がいる!! たくさんいる!!』
『ぁ
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