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忘れ形見の孫娘たち
13.行こうよ
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ピカピカしてるのに熱くないよかずゆきッ!」

 とても大切な宝物を手に入れた子供のように大はしゃぎな鈴谷は僕のところまで走ってきて、手の中のホタルを見せてくれた。二人して鈴谷の手を覗き込む。鈴谷の手の中には、自身のお腹をゆっくりと輝かせているホタルが一匹、静かにもぞもぞと動いていた。

「……キモッ」
「言っても虫だからなぁ……。その割には平気で触ってるじゃん鈴谷」
「もっとキモくてヌメヌメしてるのを知ってるからね!」
「はいはい……」

 そうやってしばらくホタルたちと戯れた後、そばの大きな石に座って休憩する。座るときに

「はーい。鈴谷とかずゆきここに座るから、みんなちょっとどいてねー」

 と石にとまっていた数匹のホタルたちを鈴谷が追い散らしていた。すまんホタルたち……でも僕達もちょっと疲れたんだよ……。

 優しく輝くホタルたちに包まれ、僕と鈴谷は腰を下ろす。ホタルたちはまだ僕と鈴谷の周囲を飛び交っていて、スキを見つけては肩口や頭の上にとまって休憩していた。そのおかげで、時々鈴谷の顔が優しくぼうっと照らされて、とてもキレイな顔に見えた。

「なー鈴谷―」
「んー?」
「爺様ってさ。みんなとどんな風に接してたのかな……」
「分かんないなー……鈴谷も一緒に過ごしたわけじゃないから」

 鈴谷たちと知り合ってから湧き出た疑問が、つい口をついて出た。鈴谷以外の子たちは、みな一様に爺様の死を悼み、爺様との別れをとても悲しんでいた。それは今日の告別式でよく分かった。どうやら爺様は、今日告別式に来てくれたみんなと相当仲良く過ごしていたようだ。

 じゃあ、実際に爺様はみんなとどんな日々を送っていたんだろう? 加賀さんは、自分たちはひこざえもん提督の孫娘だと言っていた。そこまで言い切るなんて、よっぽど強固な関係性じゃなきゃ無理だ。混じりっけなしの信頼をこれだけたくさんの子たちから得ていた爺様。爺様は、どんなふうにこの子たちと過ごしていたんだろう? どれだけ楽しい日々を過ごしていたんだろう?

「気になるんだよなー。みんなとあれだけ仲がいいだなんて……」
「……」
「僕ってさ。結局爺様の負けず嫌いでエネルギッシュな部分ぐらいしかよく分かんないからさ」
「……鈴谷もさ。そういうこと、ちょっと知りたいんだよね」
「……」
「鈴谷はさ。提督が亡くなる前日に来たから。これから新しい生活が始まるんだーって時に提督が来なくなって鎮守府が混乱しちゃって……」
「……」
「みんなすごく悲しんだり怒ったりしてるんだけど、鈴谷そんなみんなと温度差があるっていうか……それに、提督との思い出がないのって鈴谷だけなんだよね。それがなんか後ろめたいっつーか……ここにいてもいいのかなぁってずっと思ってた」
「……そっか」

 
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