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忘れ形見の孫娘たち
13.行こうよ
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。今度は逆に僕の手を強く握って、ものすごい力で僕を引っ張り急き立てる。

「ほら早く行こうかずゆきッ!」
「わかった! わかったから!!」

 鈴谷にグイグイと引っ張られ、川のほとりに出た。

「うわー……」
「よかった。今年も元気だ」

 そこで待っていたのは、同じくライムグリーンに輝きながら周囲を飛び交うたくさんのホタルたちだった。たくさんの光源がふわりふわりと漂いながら、僕達の目の前で輝いて、ぼくと鈴谷を出迎えてくれる。……よかった。ホタルたちは今年も元気。

「スゴい! すごいきれい!! すごいすごい!!」
「この街唯一の隠れた観光名所だよ。今年も見られてよかった」

 川の水際まで出る僕と鈴谷。途端に周囲がホタルたちに包まれる。僕達の周囲をふわふわと漂うホタルたちは、みんなが同じタイミングで明滅し、まるで今日の僕達を労っているようにも感じた。

「すごいね! すごいねかずゆき!! みんな同じタイミングで点いたり消えたりしてるよ?」
「ホタルはだいたいみんな同じタイミングで点いたり消えたりするんだよ。たまにタイミングを外すヤツがいたりして面白いんだけど」
「きれい! ほんときれい!!」
「シー! あんま大声出すと逃げちゃう」
「え……マジ?」
「マジ」

 僕からの忠告を受け、鈴谷は慌てて両手で自分の口を押さえていた。

 僕は、星空も好きだけどホタルの方が好きだ。星空で輝く星は、まるで宝石を散りばめたようにキラキラと輝いていてとてもきれいだ。色とりどりの星の輝きを見ていると本当に飽きない。

「あ、かずゆきの頭が光ってるよ! ホタルがとまってる!!」
「人をハゲみたいにいうんじゃありませんっ! ……あ、でも鈴谷の頭にもとまってる」
「えマジ?! すごい!! 鈴谷輝いてるよ!」

 それに比べると、こいつらホタルはライムグリーン一色の輝きしかない。でもこいつらは、ぼくたちのすぐそばで輝いてくれる。すぐそばを漂いながら、ぼくたちに寄り添って輝いてくれる。今もこうやって僕や鈴谷の頭にとまって、そこであったかい光を僕達に見せてくれる。

 そう。ホタルは星空と違って優しくて人懐っこく感じるんだ。距離が近くて、僕達の方に漂ってきてくれる。まるで僕達を歓迎してくれるように、ぼんやりと点いたり消えたりして僕達と仲良くなろうとしてくれる。だから僕はホタルが好きだ。

「ぁあ! かずゆきの肩にもとまってる! かずゆきズルい!!」
「鈴谷の肩にも止まってるよ。ついでに胸のところにも」
「ホントだ! えっちいなぁこのホタル」
「考えすぎだ……」

 自分の胸元にとまったホタルを『うりゃっ』と両手で優しく捕まえる鈴谷。合わせた両手の中が薄緑に輝いている。

「ぉお! 熱くない! こんなに
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