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忘れ形見の孫娘たち
13.行こうよ
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ート姿の女の子の足にスプレー吹くのは気がひけるんだよ……

「考えすぎっしょかずゆき。……まぁいいやスプレー貸して」
「あいよ」

 手を伸ばしてきた鈴谷に虫除けスプレーを手渡す。鈴谷は僕からスプレーを受け取ると、そのまま僕の手を取って、腕にスプレーしてくれた。

「ほい。かずゆきも」
「ん。ありがと鈴谷」

 一通り僕の腕やら身体やら足やらにスプレーをしてくれた鈴谷はそのまま自分の足にもスプレーを吹きかけ、僕にスプレーを返してきた。けっこう盛大にスプレーを使ったためか、スプレー缶はさっきよりも少しひんやりとしていた。

「よしっ。行くかー!」
「おー!」

 懐中電灯をつけ、カエルの鳴き声が鳴り響く中僕達は田んぼの間を縫うように目的地に向かう。山道の入り口に着き、その山道を歩いて抜けたところが目的地だ。

「ちょっとかずゆきー……まだ着かないのー?」
「もうちょっとだよ。だからがんばれって」
「ひー……疲れたー……鈴谷もう歩けないわー……」

 両膝に手をつき、ゼーハーゼーハー言いながら歩く鈴谷は本当にしんどそうだ。日頃の運動不足がたたってるじゃないのか鈴谷? まぁ昼間も散々遊んだしなぁ。

「うるさいなー……そら確かに普段は艤装で海の上を滑ってるだけだけど……」

 このままだと到着するまで延々と鈴谷のボヤキを聞かされる羽目になりそうだ。……ええい仕方ない。自身の膝小僧に置いている鈴谷の右手を手に取ってひっぱってやることにする。

「ぉお?」
「ほらあともう少しだから。がんばれっ」
「ありがと。いつになく気が利くじゃん」
「お前も涼風と一緒で一言多いんだよ」

 そのまま強引に鈴谷の手を引っ張って目的地に向かう。今日はずっとこうやって鈴谷と手を繋いでた気がするなぁ……まぁいいか。たまにはこんな日もいいだろう。

 鈴谷の手を引きながら歩いて10分ほど経った頃。やっと目的地が見えてきた。

「川の音が聞こえるねぇ?」
「うん。目的地が近い」
「どんなとこ?」
「そこにいるだろ?」
「? ……あ!」

 この辺りはもう目的地に近い。一匹ぐらいは繁殖場所から離れてここまで迷い込むことがあってもおかしくはない。

「ホタルだ!!」

 おそらくは目的地から迷い込んだであろう一匹のホタルが、ライムグリーンの優しい光を発しながら、鈴谷の周囲をふわりふわりと漂っていた。

「うわーすごいきれい!」
「目的地はこんなもんじゃないぞー」
「そうなの?!」
「そらそうだ。こいつはちょうどそこからはぐれた一匹なんだろうさ」
「マジで?! なら早く行こう!」

 今までは僕に手を引っ張られていた鈴谷だったが、はぐれホタルを一匹見つけてテンションが上がって元気になったようだ
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