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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 22
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めた。
 肌を突き刺す冷気が漂い始め、ミートリッテの肩が微かに跳ねる。

(この感じ……あの、蛇みたいな視線の……!?)

「可哀想な仔猫。都合が悪い現実は全部隠され愛され恵まれた、幸せすぎる愚か者。だからこそお前は、その指輪に込められた意味にも気付けてない」
「……意味?」

 全身にまとわりつく、何の感情もない不気味な視線。
 甦った恐怖が声帯を萎縮(いしゅく)させ、背筋に汗を滲ませた。

「爪を立て怪我を負わせた相手の顔をまともに見ることもなく、犯した罪の重さからも目を背けたまま、自分達だけ夢を持って愛し愛され生きていこうだなんて。さすがに虫が良すぎると思わない?
 ああ、羨望でも嫉妬でもないわよ。辿り着いた深みが違うだけでお前達も所詮はこちら側の人間なんだもの。
 上にも下にも行けない中途半端で滑稽なお前達は、美しい幻想のお花畑で延々と根を踏み荒し続けていれば良い。いつか足下の毒虫達に殺される日が来るまでね。無様に泡を吹いて苦しみ悶える姿が、楽しみで仕方ないわ」

 くくく……と、くぐもった嘲笑が狂気を孕み。
 ありもしない泥沼がミートリッテの呼吸を奪い取ろうとする。

(なに……? いったい何の話をしてるの? この人)

「あはは! 本っ当に楽しみ! お前が汚れに泣き叫ぶ様を見せつけたら、あいつはきっと発狂するんでしょうね!」

(あいつ? って……)

「好い気味! ようやく、あの取り澄ました綺麗な顔が絶望に染まる瞬間を拝めるのよ!? 嫌でも胸が高鳴るってものだわ! あなたもそうでしょ? ねえ、()()()()()()()?」

「……………………は?」

 女性の視線がミートリッテを通り越して、右斜め後ろに注がれている。
 まさか! と勢いよく振り向いて、すぐに目が合ったのは。

「こんばんは、ミートリッテさん」

 ギスギスした緊張感もどこ吹く風。
 ゆったり優雅に微笑む、見た目だけは繊細美人な腹黒神父その人だった。




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