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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 22
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ちゃん」
 まただ。
 また、正体不明の集団が出て来た。
 (私が居ると手も足も出せない「あいつら」。あの人が言ってた「アイツら」と同じ集団……自警団の事?)
 「シャムロックはお前達の餌とか盾だと言いたいわけ?」
 「いいえ? あいつらにとってはそうでも、私達にしてみればお前は極上の装飾品。その愛らしい容姿、小鳥のさえずりに匹敵する澄んだ声。数年掛けて男の味を擦り込めば、他に類を見ない妖艶な女へと生まれ変わるでしょう。ともすれば高級娼婦よりたくさんの金を生む器だもの。無駄に消費するのは勿体無いわ。この子も……ね」
 女性の唇がアルフィンの左頬に触れ、ちろりと出した舌先でぺろっと舐め上げた。
 こんな時でさえ少女は無表情に見えるが、ぎゅっと閉じた目蓋が恐怖に竦む彼女の心を伝えてくる。
 「……下種野郎って言葉は、品性が足りてない男の為にあるんだと思ってた」
 (無駄な消費は勿体無い? あんな場所でぞんざいに殺しかけといて、よく言うわ!)
 殴りたい。今度こそ殺されたとしても構わない。アルフィンを貶める汚らわしい女の顔を、全力で殴り飛ばしたい。
 けれど、刃はアルフィンの喉元に添っている。軽く横に動かされてしまったら終わりだ。
 グッと両手を握り締め、せめて目線だけでも怒りを表す。
 「あはは! 莫迦な山猫にも冷静な判断力は有るのね。そうよ。動いたらお前の負け。この子を護りたいなら、大人しく私達に従いなさい」
 背後でザリっと砂を踏む音がした。
 振り返らずとも何者が何をしようとしてるのかは想像が付くので、抵抗はしない。
 今は、まだ。
 「お前達にはいろいろ訊いておきたいんだけど……とりあえず、「あいつら」って、誰?」
 腕を取られる寸前の問いに、女性は暗く淀んだ瞳をスッと細めた。
 肌を突き刺す冷気が漂い始め、ミートリッテの肩が微かに跳ねる。
 (この感じ……あの視線の……!)
 「……可哀想な仔猫。都合が悪い現実は全部隠され愛され恵まれた、幸せすぎる愚か者。お前はその指輪に込められた意味にも気付いてない」
 「……意味?」
 全身に纏わり付く、何の感情も無い不気味な視線。
 甦った恐怖が声帯を萎縮させ、背筋に汗を滲ませた。
 「爪を立て怪我を負わせた相手の顔をまともに見ることも無く、犯した罪の重さからも目を背けたまま自分達だけ夢を持って愛し愛され生きて行こうだなんて、虫が良すぎると思わない? ああ、羨望でも嫉妬でもないわよ。辿り着いた深みが違うだけで、お前達も所詮此方側の人間なんだもの。上にも下にも行けない中途半端で滑稽なお前達は、美しい幻想のお花畑でずっとずっと根を踏み続けていれば良い。いつか足下の毒虫達に殺される日が来るまでね。無様に泡を吹いて苦しみ悶える姿が楽しみで仕方ないわ」
 くくく……と、く
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