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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 22
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込む開けた空間の数歩手前で足を止め、スカートのポケットに入れておいた例の指輪を頭上へ掲げる。
 それを合図とばかりに、不自然な木の葉のざわめきが周辺に大きく響いた。
 (囲まれてる、か。相変わらず気配もしないし……前方に意識を集中した途端、上からサクッと斬られそうで嫌だな)
 さりげなく視線を走らせつつ指輪を仕舞い、いつ何が来ても対処できるよう身構える。
 と、
 「あっははは! 逃げる以外に芸が無い「こそ泥」と「私達」が「同業者」? 獅子と成猫の違いも理解できないなんて、つくづく莫迦な仔猫ね。ああ可笑しい。笑えるあまり、うっかり手を滑らせてしまいそうだわ」
 (仔猫って……え? ちょっと待って、女!? シャムロックを知ってる敵の中に、女の人が混じってるの!?)
 海賊にせよそうでないにせよ、斧を使う集団といえば、なんとなく男しか居ないと思ってた。予想外の声色に肝を潰され、戸惑った刹那。
 「ぃ……っ!」
 薄い光筋の向こう側で、女の子の小さな悲鳴が聞こえた。
 「止めて!!」
 咄嗟に木々の間を飛び出し……硬直する。
 「……ミー、姉……」
 歪な円を描く乾いた地面の中心に、二人の女が立っていた。
 一人は可愛らしいお人形の面差しに右の青と左の紫で色違いの虹彩を持つ、金髪の少女アルフィン。
 もう一人は、腰下までを緩やかに覆う小麦色の長い髪と銀色に鋭く光る虹彩を持つ、中肉中背の見知らない女性。
 艶めいた赤い唇を剣呑な微笑みで歪める女性と対照的に、少女は瞳に怯えを宿し、ミートリッテを呼ぶ声も弱々しく震えている。
 「はじめまして、アルスエルナの山猫さん。自覚は無いでしょうけど、お前にはいつもお世話になってるのよ。私達」
 女性の細い腕がねっとりとした手付きで背後からアルフィンの肩を抱き、左手で血に濡れたアルフィンの右手首を。右手で諸刃の短剣の柄を掴んでいる。
 「っ……貴様……!」
 アルフィンが傷付けられた。
 腕を伝い肘から滴り落ちる鮮血が、ミートリッテの心臓を激しく叩き付ける。
 「お前達の狙い通り、(シャムロック)は此処に来たんだ! もう良いだろう!? アルフィンを離せ! その子に汚らしい手で触れるな!!」
 「……あはっ。莫迦も此処まで極まると、いっそ可哀想ね。誰が。いつ。お前を呼んだと言うの?」
 「な……ッ!?」
 ミートリッテを見下す目で、女性がクスクスと笑う。
 「あれだけ判りやすく誘導しておいて、何を……」
 「ええ。お前が居れば、あいつらは確実に手も足も出せなくなる。そういう意味で、お前の利用価値は稀有な宝石と同等だわ。逃がされた事が改めてそれを証明した。だから私の元へ誘い込んだ。心も体もこれから大いに活用させてもらうけど……でも、私達が本当に呼んでいるのはお前じゃないのよ、仔猫
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