Side Story
少女怪盗と仮面の神父 21
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現状、ミートリッテと失踪者を繋ぐという『何か』の他に、有力な足掛かりは思い付かない。盗み聴く会話の中で「あれ」としか形容されない物の正体を確かめる為には、グレンデル親子の家へこっそり忍び込むしかないが……それにはまず、村中を動き回る村人達の目から逃れ続ける必要がある。
目的地は住宅区の東端、魚を保管する施設の直ぐ近く。
けれど目の前には、二頭立ての馬車二台が余裕で擦れ違える幅広な坂道が横たわり、見晴らしのいい空間を大きく開いている。
ミートリッテの素早さなら一分と掛からずに駆け抜けられる距離だが……光が残る空の下、四方八方をキョロキョロする大勢の誰にも見付からず……となると、さすがに厳しい。
その上、例え此処を切り抜けても、目的地の周辺ではきっとグレンデルを気遣う厚い人壁が出来ている。
シャムロックが「仕事」時に使う道具も無く、人の気を逸らして逃げ切る手段も持ち合わせていない。
はっきり言って、お手上げだ。
いっそ細かい事を全部無視して暴れられたら、どれだけ楽な話だろう。
だけど、自分が表に出てしまったら村の人達をより深刻な危険に曝してしまう。村の存続すら危うくする選択だけは絶対に避けたい。
暗くなった後、本格的な夜が来るまでに……海賊達が東の崖の向こう側へ現れるまでの間に、なんとしてもアルフィン達の無事を確かめなければ。
(アルフィン……グレンデルさんが帰って来てるんだよ? やっと会えるね。二人共、この日をずっとずっと待ってたんだもん。お互いにただいまって……お帰りって、言わなきゃ駄目だよ)
早く彼女を連れ戻して、滅多に見せない笑顔を咲かせてあげたい。
嬉しそうな親子の顔を見届けるのは、ミートリッテにとっても喜びだ。
響き渡る名前を背に、膝を強く抱え……
「おい! あっちにミートリッテが居たって!」
(…………はい!?)
思い掛けない言葉に目を見張る。
「教会の下! 崖の近くで走ってたらしいぞ」
「西の崖下ぁ!? なんだってそんな危ないトコに!」
「そういえばあの子、時々妙に崖を気にしてたわよね。此処じゃドボーンにならないーっとか、高さが足りないーっとか……」
「はぁあ……? 自殺願望でもあんのか、アイツは!?」
(ないない! 自殺願望なんて無いし、西の崖下に行ったのは数日前の一回きりだよ! ってか、私は此処に居るんですけど!?)
「とにかく行こう! 早く取っ捕まえないと、グレンデルがそろそろ本気でヤバイ!」
「ああ! ったく。こんだけ大騒ぎしてるのに、今までドコ行ってたんだかなぁ! 手の掛かるやつ!」
(ごめんなさい! 自分でもよく分かんない!)
急展開に焦り、ついつい勢いよく地面に手を突いてしまったが、走り出した一団に枯れ落ちた木の葉の悲鳴は聞こえなかっ
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