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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 21
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各所の持ち場に就いていた団員達も悉く消えていたらしい。
 念の為、信仰入りでアーレストと関わりがあるミートリッテに話を聴こうとハウィスの家を訪ねたが、沈痛な面持ちのハウィスが「それはできない」「ミートリッテは村に居ない」と、けんもほろろに全員を玄関前で撥ねつけた。
 女衆が慌てふためく中、今朝になって遠海組が盛大な鐘の音と共に無事帰還。
 船を降りたグレンデルが、いつもなら真っ先に出迎えてくれるアルフィンを捜して帰宅するも、家の中には誰も居なかった。その代わりテーブル周りに置かれた『何か』を見付けて、今度はミートリッテを捜し始める。
 波打ち際だろうと畑のど真ん中であろうと、辺り構わず半狂乱で駆け回る姿を見兼ねた村人達が、ハウィスに取り次ぎを求めて再度家を訪ねるが、大声で呼び掛けても荒々しく扉を叩いても返事は無く。
 グレンデルが泣き喚いて縋り付いても物音一つしない家を見て、一同は漸く事態を察した。
 ミートリッテとハウィスも、アルフィンやアーレストと同じく『失踪していた』のだと。
 その後、アルフィンの母親であるティルティアと親しかった女衆の一人が、失踪者達の手掛かりを求めてグレンデル親子の家へ行った際、手付かずのまま置かれていた『何か』を見て、アーレストとミートリッテの繋がりを指摘。
 斯くして、アーレストを捜す女衆とアルフィンを捜す男衆とでミートリッテ確保の優先権を奪い合う構図が完成し、現在に至る。



 自警団も軍人も警備隊も居ない。アーレストもアルフィンもハウィスも消えた。残っている村人達は、言動を観察した限り一連の騒動には関わってない。突然斧をぶん投げて寄越した「奴ら」も、危険物を掲げて襲って来る気配はまだ無い。
 つまり、今のネアウィック村にはミートリッテの質問に答えられる相手が皆無だ。それどころか、手枷だの鎖だの靴がおかしいだの、余計な不安を煽る姿でうっかり声を掛けようものなら、あっという間に包囲され、凄まじい圧力で質問攻めを喰らってしまう。
 村に着いた当初は話を聴きたくてハウィスの家を目指していたが、肝心な家人が行方不明で、家の鍵も今は手元を離れている。
 こうなれば取るべき行動はただ一つ。
 グレンデル親子の家に在る『何か』を、自分の目で確認するしかない。
 (アーレスト神父は、私を家に送った直後から消息を絶ってる。アルフィンは昨日一日、いつも通りに過ごしてたのを村内の其処彼処で誰かしらが見てるし、ハウィスは昨夜も普通に出勤してたのに、二人共今朝には消えてしまった。……バーデル軍人と警備隊と自警団、何があったか知らないけど、揃っていなくなった時機が悪すぎるのよ! 見て呉れは繊細美人でも一応は成人男性な腹黒神父はともかく、ハウィスとアルフィンは多分捕まってる。早く助けなきゃ、何をされるか……っ!)
 
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