Side Story
少女怪盗と仮面の神父 21
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果樹園の輪郭に沿って木々の隙間を潜り抜け、村の出入口へと続く坂道の下方付近で足を止める。
高やかな草花や繁る枝葉に隠れて各方面を窺うが……確かに、見張り役に就いていた筈の自警団員は一人も居ない。歩きやすく整えられた道の上で右往左往してるのは、杳として行方が知れない少女を捜す二十人ほどの村人達だ。
自分達が置かれている状況をいまいち飲み込めていない彼らは、ミートリッテがこの場所に着くまでずっと聴いてきた多くの声と同様に、やはりアルフィンの名前を叫びながら各々意見の対立を激化させている。
おかげで「不在の間にネアウィック村で何が起きていたのか」は、直接説明を求めずとも大体把握できてしまったのだが……盗み聞きしている者としての心境は複雑だ。
(本気で心配してるからこその口喧嘩なのは分かるし、いろいろ教えてくれるのは心底ありがたいんだけど……一家庭の内部事情とか拡散してる場合じゃないと思うよ、みんな……)
度々脱線しては壮絶な罵り合いに発展し、近くを通り掛かった人に止められて冷静になったかと思えば、また違う場所で始まる。全く切りが無い口論を止められもせず、ミートリッテは木の根元に腰を下ろして太い幹へ背中を預けた。
大きな瞳に映る、無数の葉っぱに千切られた青紫色の空。
見上げると同時に深く長く息を吐き出し、直ぐにでも飛び出してしまいたい衝動を抑えようとしたが……あまり効き目は無いらしい。酷い目眩と疼痛で、頭がどうにかなってしまいそうだ。
(……もう少し……あとちょっとだけで良いから早く、暗くなって。みんなの目を閉ざして……っ)
ネアウィック村が暗闇に包まれる時を待ち望む反面、刻々と迫る夜に恐怖と焦りが募っていく。
人前へ堂々と出られなくなった自分自身を疎ましく思い、風で乱れた髪を乱暴に掻き毟っても、苛立ちは解消されなかった。
村の人達が知らず知らずのうちに提供してくれた情報を整理した結果、ミートリッテに掴めた事実は全部で五つ。
一つ目は、今日が海賊達の『依頼』を受けて丁度五日目……深夜、指輪を引き渡さなければならない当日だという事。
二つ目は、バーデルの面々が先日入国許可を得て南方領へ散開し、以降村人達の前には全く現れていない事。
三つ目は、自警団員がいつの間にか、一人残らず消えていた事。
四つ目は、アーレストが昨日の朝から。アルフィン、ミートリッテ、そして……ハウィスが、今日の昼少し前から失踪扱いされている事。
五つ目は、グレンデル親子の家に、ミートリッテと他の失踪者達の関係を示す『何か』が在るって事だ。
順序良く並べると。
昨日の朝、どれだけ待っても開かない教会の門を訝しんだ女衆が、何かあったのではと心配になって自警団の詰所へ駆け込んだ。
が、其処は既に蛻の殻で、気付けば村内
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