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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十四話 明日への展望
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たような表情をすると恥ずかしそうに笑った。柄にも無い事を言ったと思ったのだろうか。
「そんな悪いことを考えていらっしゃったのですか?」
「ひどいことを言いますね、少佐は。少しは慰めようとは考えないんですか」
「考えません。閣下の副官になってもう二年です。閣下がどういう方か良くわかっています」
「私も少佐がどういう性格か分っていますよ」
そう言うと司令長官は軽やかに笑い声を上げて、ココアを淹れて欲しいと頼んできた。全く可愛げが無い。もう少し可愛げが有れば本当に可愛いのに。
宇宙暦796年8月24日 6:00 第十三艦隊旗艦ヒューベリオン ヤン・ウェンリー
どうやら帝国軍を振り切ったらしい。あの輸送艦を使った戦闘が最後の戦闘になった。それにしてもグリーンヒル総参謀長も面白い作戦を考えるものだ。どの道、輸送艦は救えない、それならいっそと言う事か。
おかげで何とか逃げ切る事が出来た。艦橋内にもようやく落ち着いた雰囲気が漂っている。皆生きて帰れるのが嬉しいのだろう。表情にも笑みが浮かんでいる乗組員が多い。
今回の戦いで、同盟軍は大きな損害を受けた。五個艦隊が全滅、残りの四個艦隊も三万隻がやっとだ。二個艦隊分でしかない。損傷率は七割を超えた。未帰還者は一千万に達するだろう。これが同盟にどんな影響を及ぼすのか、想像もつかない。
今回の戦いで撤退できたのはビュコック艦隊が約一万隻、ウランフ艦隊が約七千隻、ボロディン艦隊が約五千隻、私の艦隊が約八千隻だ。
これと、本国で待機していた三個艦隊で同盟を守る事になる。嫌でもイゼルローン要塞を中心とした防衛戦に徹さざるを得ないだろう。問題はフェザーンだ。
フェザーンが同盟よりの行動を取るか、帝国よりの行動を取るかで同盟の命運は決まるだろう。そのあたりの見極めが重要になる。次の本部長と司令長官には認識してもらいたいものだ。
今回の遠征で同盟が得るものがあったとしたら、ヴァレンシュタイン司令長官の恐ろしさを誰もが認識した事、宇宙艦隊司令部の無責任な連中と無責任な政治家が居なくなる事だろう。
情けない話だが、それくらいしか得るものが無い。いや、一番大事なものを同盟は得たのか。それが無かったからこんな馬鹿げた戦争が起きた。
ヴァレンシュタイン司令長官は何を望んでいるのだろう。今回の戦いで彼の影響力は今まで以上に強くなるはずだ。彼はまだ若い。その彼がこの先望むものは一体なんだろう。地位? 名誉? 権力? 一度しか会っていないがそんなものを望むようにも見えなかった。だとすると……理想?
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