暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第百十二話
[10/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
グウェン……」

 メイン武器である忍刀は先程のリズとの戦いで破壊され、サブ武器であるクナイは全て消費されて。ばつの悪そうな表情でそっぽを向くグウェンに話しかけながら、ルクスは自らの二刀を鞘にしまった。

「……話を、しよう」

 鞘にしまった二刀はリズとシリカから貰ったもので、あの水着コンテストのことを思い出し、ルクスの表情は自然とほころんだ。そして何度目になるかわからないその質問は――ようやく、彼女に通じたらしく。



「大丈夫か?」

「そっちこそ……と言いたいところだけど、随分大丈夫そうねぇ」

 ルクスとグウェンを置いて森の中を歩いていったリズは、まるで待っていたかのようなショウキと遭遇した。HPはピナがヒールブレスで回復してくれたものの、血に濡れたような服までは直すことは出来ず。同じく戦いを繰り広げてきた筈のショウキは、対照的にほとんど無事で――いや、大丈夫じゃないところが一つだけ。

「凄い怖い顔してるわ。特に目」

「……直ってないか?」

 殺気立った表情で困ったように笑うショウキの問いに、首を全力で横に振っておく。……あの浮遊城では時折見ていた、殺気を伴った真剣な表情。本人も普段の表情に直そうとしているようだが、久々だからかどうにもこうにも上手くいかないらしく、髪をガリガリと掻く様子にリズはため息を一つ。

「そんなんじゃ店番も出来ないわよ。ほら、直してあげるからちゃっちゃと屈む!」

「直すってどうやっ――へ?」

 疑問を呈しつつも素直に膝を屈ませるショウキの両頬を、リズは思いっきり左右に引っ張った。表情と呼べる表情はなくなっていき、面白くなってきたリズはさらに上下にも動かしていく。

「……ふぉい」

「プッ……ふふ。ごめんごめん、でもいつもの仏頂面に直ったでしょ?」

 両手が塞がっていなければ、記録結晶を使っていたのに――と、もう一度思い出し笑いをした後にショウキの方を見ると、確かに普段の仏頂面に直って頬を撫でていた。そんな様子が面白くて笑みがぶり返し、リズに釣られてショウキも笑みを浮かべると――

 ――どちらからともなく、草原に倒れ伏した。

『疲れた……』

 一字一句同じようなことを呟きながら、隣り合わせで仰向け寝で空を眺める。浮遊城の中でどこまでも青空は広がっており、飛翔するための風が涼しげに顔を撫でていき、草むらがベッドのように反発する。目をつぶってしまえば、容易く意識が刈り取られてしまいそうだ。

「あー……寝る。これは寝る」

「向こう、助けにいかなくていいのか」

「どーせユウキが全員倒してくれんでしょ」

「あとリーファにクラインもな」

「……要するにそれ、シリカ以外全員じゃない」

「…………」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ