第百十二話
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「ヒッ――」
喉から絞り出したような、かん高い悲鳴がグウェンの口から勝手に漏れる。迫り来るメイスの一撃に目をつぶり、歯を食いしばって来るべき衝撃に備えたが――グウェンは何も感じることはなく。
「あ、れ……?」
恐る恐る目を開けてみたグウェンの視界に映ったものは、メイスを振りかぶったような体勢のリズ。そして――柄から先がなくなった、自らの愛刀の姿。要するにリズは、グウェンではなく、その得物たる忍刀のみを狙ったのだ。
「……何よそれ……バカにしてんの!?」
「……あんたと決着をつけんのは、あたしの役目じゃないわ」
ムカつくことは確かだから、一発はぶん殴らせて貰ったけど――と、リズは言葉を続けて。グウェンとはもう戦う気はないとばかりに、適当に距離を取っていく。
「何を意味不明なことばっかり!」
グウェンは翼をしまい込んで地上に着地すると、太ももに仕込んだクナイを取り出すと、無防備なリズへと高速で射出する。投剣ソードスキルを伴ったその一撃は、吸い込まれるようにリズの頭部に向かっていくものの――突如として、その間に入った片手剣に弾かれた。
「……グウェン」
「ルクス……何でアンタが……ここにいるのよ!」
リズとグウェンの間に入ったのは、ピナを肩に乗せたルクス。息を切らしていたものの、もう麻痺は残っていないらしく、リズを守るようにその二刀を構えた。そして計画の上でありえないルクスの登場に動揺し、グウェンは子供の癇癪のように残ったクナイを投げていく――そんな破れかぶれの攻撃が、防御に秀でたルクスを突破する訳もなく、それらは全てルクスの二刀によって阻まれて。
「リズ……その、すまな……いや。ありがとう」
「こんぐらいお茶の子さいさい、よ。……ねぇ、あんた」
謝罪ではなく感謝の言葉を吐いたルクスに、リズは『よろしい』と肩を叩きながら。クナイを投げきって肩で息するグウェンに、ピナを回収しながらルクス越しに話しかけた。
「ルクスと仲直りしたら……またウチの店に来なさい。壊しちゃった武器より、もっと上等な武器を用意してあげるんだから」
「…………」
その言葉にグウェンが何を思ったかは分からないが、リズはピナを連れてその場から立ち去っていく。あんたと決着をつけるのは、あたしの役目じゃない――という言葉の通りに、二人の関係にリズがこれ以上立ち入る資格はない。
「じゃあルクス、頑張んなさい」
「……ありがとう」
ルクスもそれは分かっている。グウェンとの決着をつけなければならないのは――あの浮遊城の頃と向き合う必要があるのは、他ならぬ自分だということを。もう一度だけリズに……いや、聞こえないだろうがみんなに礼を言うと。改めてグウェンに向き直った。
「
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