暁 〜小説投稿サイト〜
東方 躍動衝波
第1話 この男、幻想入り
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ある日、暗い夜道を1人で歩く男が居た。男は孤独であったわけではない。友人との交流をしっかりやる程度には社交的で、彼はその友人と遊び終えて1人で帰っているところだった。その最中にショッピングでも楽しんできたのか、背負っている私物リュックの中には色々なモノが積まれていた。何処にでも居そうな若干人相が悪いその男は、美しい夜空を立ち止まり仰ぎ見た。空には月が昇り、数多の星が地上に存在する全ての者に光を届けていた。




「綺麗だなあ...。」




普通に見る分には、天候が快晴の場合夜空は美しく感じるだろう。しかし、見方を変えればどうだろうか?男は背負っていたリュックを下ろし、あるモノを取り出した。



「えーっと...。確かIRだったような?いや。ONか。」



モノのスイッチを入れるまで、若干悪戦苦闘を強いられる。この男の場合、ちょっと手際良く出来ても良い雰囲気はあるのだが、実際はかなりのおっちょこちょいである。やっとで取り出したモノ。ナイトビジョンのスイッチを入れると、その中から目を覗かせた。



「うん。こういう見方もありだな。」



ナイトビジョン越しに見る夜空は、普段肉眼で眺める夜空とは違うモノだった。星がくっきりと夜空に浮かび上がり、星々が発している僅かな光も確認出来る。



「ナイトビジョンの調子も良いな。別の場所でも見てみようかな?」



ナイトビジョンの点検がてら美しい景色を堪能したが、まだ男は満足していない様だ。星が綺麗に見えると言っても、此処は住宅街の真っ只中だ。時間帯が夜ということもあり人気はなく、辺りは静まり返っている。静かなのは、確かに重要なことだ。しかし、星を見るには住宅街では風情があまりにも無さ過ぎる。男は場所を変えようと、再び歩き出した。



「...。」



男が今歩いている住宅街からそう遠く離れていない場所に、彼だけの絶好の穴場がある。山に入り獣道を少し歩いた先にそれはあるのだが、そこに中々辿り着かない。その山なのだが、そこまで深くない筈なのだ。これまでも何回かその穴場に行っていることを考えると、道を間違えたとは考えにくい。いや、もしかしたら何処かで間違えているかもしれない。



「おっかしーな?この道の筈なんだけど...。」



地理状況が明らかに違うと気付き始めた頃、男は今現在自分が何処に居るのかさえ見当がつかなくなっていた。完全に迷ったとこの瞬間、男は確信した。近くに川でもあれば良いがと思い探索するも、その試みも体力を消耗しただけの、無駄な行いになってしまった。
近くの大木にもたれ掛かり、大きな溜息を吐いた。その後、リュックの中に入っていた水分を多少摂取し、発汗後の着替えと靴の履き替えを行う。
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