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どうして俺ばかり
第三章

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 ある日だ、彼は森の小鳥にこう言われた。
「なあ、あんた最近必死だがな」
「俺達の姿を知ってもらっているんだよ」
 オスカーは頭上の木の枝に止まっているその小鳥にも言った。
「狼のな」
「そうだよな、それはわかるよ」
「あんたはわかってくれるか」
「まあな、ただな」
「ただ?」
「あんたの話聞いてるとな」
 狼の真の姿をだ。
「魅力ないな」
「魅力がないだと?」
「必要なものだけ狩ってとかな」
「それが俺達なんだよ」
 オスカーもこう返す。
「ずっと言ってるだろ」
「だからその姿ってな」
「何なんだよ」
「あまりっていうか全然な」
「全然・」
「魅力感じないな」
 これが小鳥の意見だった。
「犬と一緒だな」
「あいつ等は俺達の弟分だがな」
 狼を家畜化したものだ、だからオスカーもこうした見方だ。
「可愛い奴等だが軟弱なのが困るな」
「そうそう、軟弱でな」 
 オスカーが言う狼の真の姿はというのだ。
「しかも家族を大事にするんだよな」
「群れの仲間もな」
「あと誇り高くて嘘も言わない」
「オーディンに誓ってな」
「それじゃあ本当に面白くないわ」
 これが小鳥の見方だった。
「童話のあんた達の凄まじい悪役さはいいけれど」
「あれの何処がいいんだ」
「徹底的に悪いだろ、やりたい放題で」
「だからそれは違う姿だって言ってるだろ」
「それでもだよ、童話のあんた達は魅力があるんだよ」
 その徹底した悪役ぶりがというのだ。
「相当にな、おいらはそっちの方がずっといいぜ」
「悪役だから魅力あるのか」
「そうだよ、格好いいぜ」 
 悪役としての狼はというのだ。
「それに対してあんたが言う真の狼はな」
「犬と同じかよ」
「そうだな、おいら犬も嫌いじゃないがな」
 それでもというのだ。
「あんたは犬みたいには思われたくないか」
「軟弱だって言ったな、可愛い弟分でもな」
「そうだろ、じゃあな」
「真の俺達よりもか」
「言われてるあんた達の方がいいな」
「変な話だな」
「魅力ってそんなものだろ」
 いささか達観した言葉をだ、小鳥はその鶯色の小さな身体から出した。
「悪くてもそれがかえってよかったりしてな」
「真実がか」
「よくなかったりするんだろ」
「俺は真実を知ってもらいたいんだが」
「けれどその真実がな」
「全然面白くないっていうんだな」
「何の魅力もないよ」
 それこそというのだ。
「実際に」
「嫌な話だな」
「悪いなら悪いで魅力あるだろ」
 小鳥はオスカーに言った。
「世の中そんなものなんだよ」
「じゃあ悪名を甘受しろっていうのか」
「犬みたいに思われるのとどっちがいい?」
 小鳥はオスカーにこうも問うた。
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