第五章
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「特にです」
「肩肘張ることはですか」
「ありません、では」
「はい、茶室に入って」
「お話をしましょう」
「そして茶室で二人きりで」
「ですからその様なことはしませぬ」
口だけでなく目もだ、天空は怒らせて美桜に返した。
「拙僧はよき僧侶でありたいと思っていますから」
「だからですか」
「そんなことはしませぬ」
絶対にという言葉だった。
「何があろうとも」
「天空さんって本当に真面目なんですね」
「その辺りの破戒僧と一緒にしないで下さい」
「そうしたお坊さん実際にいるんですか」
「少なくとも拙僧は違うつもりです」
そのことは断ってだ、天空は美桜を寺の敷地内にある茶室に案内した。その狭い入口の質素だが整った趣の中に入って。
まずは茶、抹茶と羊羹を出してからだ。天空は自らも茶を手にしつつ美桜に話した。
「発想の転換は申し上げましたが」
「はい、そうでしたね」
「それです」
「それをすればですか」
「いいと思います」
「発想の転換といいますと」
その考えについてだ、美桜は抹茶が入った碗を手にしつつ述べた。
「悪い悪いばかり思わずに」
「どうしてもそう思いますと」
「かえって悪くなる」
「はい、世の中は不思議なものでして」
天空は羊羹に爪楊枝を刺しつつ述べた。
「悪い悪いと思えばです」
「余計にですね」
「悪いことが起こるものです、これはです」
僧侶らしくだ、天空は話した。
「陰の気が悪い因縁や霊を引き寄せてしまう」
「そうなるんですね」
「このことは貴女も聞かれたことがありますね」
「はい」
その通りだとだ、美桜も答えた。
「実際に」
「そうですね、ですから」
「それで、ですか」
「そう思われないことがです」
「大事なんですね」
「まずは」
「そうなんですね」
「近頃ついていないとばかり思われていますね」
「実際に」
その通りだとだ、美桜は天空に答えた。
「そうしたことばかりです」
「やはりそうですな、ですから」
「悪いことが起こっても」
「具体的にです」
美桜にだ、天空はこうも問うた。
「お話してくれますか、どうした不幸があったか」
「そのこともですね」
「はい、詳しく」
「わかりました」
天空に言われてだ、美桜は実際にここ最近の不幸のことを話した。その不幸を全て聞いてであった。
天空は考える顔でだ、こう美桜に言った。
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