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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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るんだぞ!誰にも知られぬよう、誰にも靡かぬように!その思いを胸の内に止め、守るのがたった一つの首飾りなんだぞっ!!!貴様が居なくなった王宮で孤独を耐え忍ぶのがどれだけ辛い事か、貴様には分かっておらん!!!」
「くっ、苦じぃ・・・死ぬっ・・・」
「おー、うっさ・・・耳が死んじゃうー」

 友人の文句を聞き流し、熊美は青褪め始めた慧卓をぽいと地面に投げ捨てた。尻を打ち、喉を押さえてげほげほと慧卓は咳き込む。その激しき言葉と余りに乱暴な手打ちを見て、見物人は驚き呆れ、アリッサ達はただただ唖然とする事しかできない。

「貴様には積極性が無い!!!!己の思いを自分の言葉で表し、それを物に代替させるだけだ!!!自分から手足を動かし、自分の熱意を伝える事が出来ておらん!!!その積極性の無さが、貴様の恋慕の手助けとなると思うか!?なる筈が無かろう!!!」
「・・・ごたごた言ってんじゃねぇよっ、糞羆ぁぁ!!!!」

 普段の礼儀正しさをかなぐり捨てて慧卓は怒声を奏でる。一方的に己の恋の機微を意味の無いものと吐き捨てられて、頭が鳥のようにかっかとなってしまっている。

「年上ぶって言いたい放題やりたい放題しやがってよぉ・・・こっちの淡い感情は関係ありませんか!?無いですかそうですかぁ!?」
「貴様が理解してないから言っておるのだっ!!生来の貴き者を落とす覚悟というのを理解しておらん!!貴様に足らんのは何か教えてやろうか!?それは激情だ!!!!愛のためならば、一時の羞恥も飲み干す、そういう情が全く足りておらん!!!暗幕に隠された想い人の願いを汲み取り、それを叶えようとする熱意が足らん!!!」
「・・・それが証明できれば、俺はどうなるんだよ?」
「決まってる、男足りえるのだ」

 躊躇いの無い瞳と言葉を受けて出掛かった文句が喉に詰まる。そして慧卓は投げ捨てられた怒りを溜め込みつつも、それを上回る欲求を抱く。己の想いを単純明快に現し、そして公衆の面前でするには恥を伴うであろう、一つの方法を。

「・・・すみません、俺に馬を下さい」
「ほう、クマミの甘言に乗せられるのか、君は?」
「いいえ、自分の気持ちに決着をつけるだけです。出せ。早くしやがって下さい」
「ははははっ!!いい態度だっ、それでこそ男だよっ!!」

 オルヴァは笑みを飛ばして部下に指示する。始めから答が出るのを分かっていたように、部下が一頭の馬を率いて前に出る。見た目からして強靭な体躯に健やかな栗毛が生え、瞳は鷹のように鋭い馬であった。

「こいつの名前は?」
「我々はベルと呼んでいる。こいつを頼むぞ」
「・・・承知しました」

 慧卓は馬を受け取りつつ、逞しい肌を何度か撫でる。抵抗の意思を見せる事無く、馬が地面を二・三度摩った。よし、と一息出すと、慧卓は一気に馬に
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