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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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頑張ってきたわ。先ずはそれをお祝いします」
「有難う御座います」
「貴方には多くの友人が居る、年齢に分け隔てなくね。北に旅立つにあたり、必ず多くの艱難が待ち構えているでしょう。自分だけじゃ如何にもならないと思ったら、直ぐにその人達を当てにしなさい。きっと助けてくれる」
「・・・承知してます。助けられた分、彼らの分も助けますよ」
「・・・貴方はこれからエルフ自治領に行くのよ?今、あそこで何が起きているか充分に理解した上での発言でしょうね?」

 ゆっくりと紡がれた口調から温かみが俄かに失せて、反対に鋭さが滲み出る。慧卓は確りと頷きながら、己の言葉を紡ぐ。

「・・・民族内での派閥争い。強権派と穏健派との対立。俺達北嶺派遣団にも、いずれ選択の時が来る。どちらを取るか、どちらを見捨てるか」
「そう。そして、その決定をするのはアリッサちゃん、そしてミラーさんよ。・・・選択に伴う負担と災禍が二人を襲うでしょう。その時こそ、貴方の出番。エルフの友を見捨てる覚悟で、助けなきゃいけないの。分かるわね?」
「友を作るのは容易いが、捨てるのは難題だ。徐々に疎遠になるという手段もあるが、君には時間が託されていない。決める時も、行動する時も一瞬だ。同時に、被る恨みも膨大だ。旅路の途中で良い、充分に理解しておけよ?」
「・・・はい」

 二人の騎士の厳しき激励に、慧卓はゆっくりと頷いた。それを見て熊美とオルヴァは視線を交わし、朗らかな表情を浮かべる。馬の嘶きを御しつつ熊美は言う。

「さてと、何か忘れ物はないかしら?剣は?治療薬は?」
「あ、あれ依頼常備してますって!ついでにアロエの葉っぱも持ってます。火傷にも対応出来ますよ」
「ふぅん。・・・あら、首飾りはどうしたの?持ってないようだけど?」
「あ、あれはその・・・王女に差し上げました。・・・俺よか、似合ってると思って」
「お前の若い頃に似ているな。女誑しの才能がある。その内修羅場だ」
「黙っておれ。・・・慧卓君、本当にあげるだけ、だったの?」
「ど、如何いう事でしょうか?」

 熊美はきりっと眉を顰め強い口調で言う。馬上から糾弾されるかのような格好となった慧卓は、どきりと胸を怯ませた。

「これから半年も離れ離れになるのよ。涙を流しても、声を枯らしても決して会えない。厳格に定められた規律と、北の厳冬が二人を引き離す。それを繋ぎ止めるのがたった一個の首飾りというのは、とても不安定じゃない?」
「で、でも、俺が彼女にあげられるものなんてこれ以外ーーー」
「馬鹿か、貴様はぁっ!!!!!!!」

 裂帛の怒声が響き渡り、熊美の馬とその手がぐっと近寄り、慧卓の襟首を掴み取った。己の目の高さまで慧卓を吊り上げて、熊美は更に続けた。

「うら若き女子がなぁっ、自分の淡い思いを抱き続け
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