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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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うな言葉を吐いた。

『諸君。北のエルフと相対する者達よ。そなた達の双肩には王国の二つの重みが掛かっておる。一つ、王国の樫を仰ぐ者としての栄誉の重み。一つ、人間とエルフの和を築く名誉の重み。己を更に栄えさせ、その名を高めるのは諸君らに与えられた特別な権利である。それが与えられるに相応しき忠誠を余に示すのだ。騎士の誇りを剣と共に勇気で示せ。勇士の力を行動と共に、言葉で示せ。そなた達の思い一つ一つを主神は遍く愛す寛大な御心で、照らし続けるであろう。そして我等も、そなた達の勇姿を見届け、守護していこうぞ』

 手短に演説を済ませ、国王は口を閉ざす。間を空けぬかのように観衆から拍手が打ち鳴らされて広場を埋め尽くした。それに合わせてレイモンドも出立の命を出す。

『出立ぞ。笛を鳴らせ』

 トゥベクタの高い金属の声が響く。拍手の対象が国王から出立する者達へと切り替わった。慧卓等は足を鳴らし背を向けて、それぞれが乗る馬車へと歩いていく。重き任を得た時にのみ、国王陛下に背を向ける無礼が許されるのだ。
 広間の北門に控えられた馬車まで人々が生む万雷が降り注ぐ。慧卓の隣に歩く若き騎士、ジョゼが話し掛けてきた。

「宜しく頼むよ、新人さん」
「・・・貴方も同じ新任騎士でしょう、ジョゼ殿?」
「他人行儀」
「・・・お前も新人だろ、ジョゼ?」
「ああ、そうだとも。将来を約束された新任騎士。だが俺は昔はただの一兵卒だったんだよ。つまり叩き上げだ。お前とは雲泥の差なんだよ」
「はいはい、そうですか。いざとなったら頼るぞ」
「何時だって頼ってくれよ。俺も、俺の野心のために、お前を頼るぜ・・・ついでに言うとよ、北嶺じゃ俺の兄貴が住んでいるんだ。ジェスロって言ってよ、多分任務の間に会うかもしれんから、一応覚えておいてくれよ」
「はいはい、忘れたら聞くから」
「・・・お前、結構いい性格だな」

 そう言って頬を攣らせながらジョゼは己が守護するブランチャード男爵の後に続いて馬車に乗り込んだ。男爵は窓から顔を覗かせて、慧卓に向かって力強く頷く。

「・・・準備は良いか、ケイタク殿。赤い水を流さずに任務を終えようぞ」
「はい・・・まだ、熊美さんにも挨拶してないのが、残念です」
「・・・その思い、直ぐに変わるだろうな」
「・・・どういう意味です?」
「直ぐにわかるさ」

 確信のある笑みを見せたミラーの言葉に頸をかしげ、慧卓は己が乗る馬車へ乗り込もうとする。落ち着いた色合いをした縦長の籠の中に、アリッサとキーラが椅子に座って待機していた。ユミルとパウリナは別の馬車に乗っているようだ。
 階段を登ろうとした時、誤って一段目を踏み外しそうになる。すると後から付いて来たリタが慧卓の手を支え、登りの手伝いをしてくれた。

「あ、ありがとう、リタさ
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