第四章
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「縁がなさそうだけれど」
「それならな」
男の同期の一人が真礼に言って来た。
「古田が実際にな」
「あの娘のお部屋に行って?」
「見てきたらどうだよ」
「ううん、何か探り入れるみたいで」
そう思われるからだとだ、真礼はその同期に難しい顔で返した。
「あまりよくないんじゃ」
「それはそうだけれどな」
「それでもなのね」
「古田がそんなに気になるんならな」
「私のこの目でってことね」
「ああ、確かめてみろよ」
「あの娘のアパートまで行って」
実は真礼が同期の中で一番沙織と親しい、お互いの家に行き来してそのうえで仲良くしている。隠すこともしていない位だ。
「そうしろっていうの?いや」
「いや、か」
「私と沙織の仲で」
その隠すことをしていない位の仲だからだというのだ。
「何でも言い合えるから」
「なら本人に直接聞くか」
「そうすればね」
「それで済むか」
「ちょっと沙織に聞いてみるわね」
「ああ、じゃあ聞いてみるか」
「そうしてみるわね」
真礼はこう言ってだ、実際にだった。
この日は沙織と二人で会社の近くの食堂に食べに行った。食べるのはきつねうどんであった。
そのきつねうどんを食べつつだ、真礼は自分の向かい側の席で自分と同じものを食べている沙織に対して問うた。清潔でそれでいて馴染みやすい店の中で。
「実はさっき同期で休憩しててね」
「お話してたのね」
「そう、沙織はお仕事だったけれど」
「今日は忙しくてね」
沙織は申し訳なさそうに真礼に返した。
「御免なさい」
「そのことはいいの、ただね」
「ただ?」
「沙織のこと話してて」
それで、というのだ。
「貴女絶対家に帰ってるわね」
「ええ、毎日ね」
「どんなに忙しくても」
「そのことを聞きたいのね」
「そう、どうしてなの?」
「そのことはね」
「お話出来る?」
沙織の目を見てだ、真礼は問うた。
「それは」
「ええ、出来るわ」
「出来るの」
「実は新しい家族が出来たの」
「家族って」
すぐにだ、真礼は彼氏やそうした相手のことを考えた。
だが、だ。沙織はその真礼に微笑んで言った。
「猫よ」
「猫なの」
「実はうちのアパートペット飼ってもよくて」
「それでなの」
「野良猫がたまたまついてきて」
「その猫ちゃんとなのね」
「今は一緒に住んでるのよ」
こう真礼に話すのだった。
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