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たった一つの笑顔
第三章

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「打ち上げだ、飲みに行こう」
「あっ、いいですね」
「じゃあ焼き鳥か何か食べに行きましょう」
「仕事が終わりましたから」
「乾杯ですね」
「そうしよう、皆よくやってくれた」
 満足している笑顔での言葉だった。
「今日はとことんまで飲もう」
「仕事が終わったお祝いに」
「是非ですね」
「そうしよう」
 こう言うのだった、そしてだった。
 実際に課の全員で会社の近くの居酒屋に入って乾杯をした、ビールをジョッキで飲み。
 それから焼き鳥なり枝豆なりを楽しんだ、沙織もその中にいたが。
 沙織は多少飲んだだけでだ、こう先輩や同僚達に言った。
「私はこれで」
「あれっ、もうかい?」
「はい、帰らせてもらいます」
「ジョッキ一杯だけじゃないか」
 池山は二杯目を受け取ったところだった、そこでの言葉だ。
「それでかい」
「申し訳ないですが」
「謝ることはないけれど」
 それでもといいうのだ。
「いや、早いね」
「ではまた明日」
「うん、じゃあね」
 こうしてだった、沙織はすぐに家に帰った、その彼女を見てだった。 
 同期入社で同じ課にいる古田真礼は首を傾げさせてこう言った、黒のロングヘアで面長で色白である。目は少し困った感じであるが中々整っている、唇は奇麗な赤で小さい。背は一五五位でわりかし均整が取れたスタイルだ。
 その彼女がだ、この時の飲み会の次の日に同期の面々と一緒に休んでいるこう言ったのだった。沙織はこうした付き合いには顔を出すが今は仕事をしている。
「沙織って最近」
「ああ、どうしたんだ?」
「何かあったのか?」
「前はよく一緒にかなり飲んだのに」
 その酒をだ。
「最近すぐにお家に帰るわね」
「そういえばずっとな」
「忙しい時も絶対に家に帰ってたな」
「そうしていたよな」
「会社に寝泊りしないで」
「前は寝泊りもしてたのに」
 また言った真礼だった。
「何かあったのかしら」
「彼氏出来たとか?」
「同居はじめたとかか」
「そんなところ?」
「そうかもね」
 こう言うのだった。
「ひょっとしたら」
「まさか?」
「沙織もそうした相手が出来たとか」
「彼氏」
「それか結婚を前提とした」
「けれどね」 
 ここでだ、真礼は考える顔で言った。
「沙織って中学高校ってね」
「ああ、中高一貫の女子校よね」
「それで大学もね」
「コンパとかサークルに参加しないで」
「ずっとプログラム系のアルバイトしてて」
「男っ気はね」
「ないんだよな」
 他の同僚達も言う。
「料理上手で他の家事もいけるらしいけれど」
「一人暮らしして長くて」
「けれど彼氏とかは」
「いないか」
「そんな話はね」
 どうにもというのだ。
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