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スペインの真実
第三章
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「ソ連の様になるべきなんだ」
「共産化だね」
「あの国は農業国だけれど」
 この時のスペインはそうだった、産業革命から完全に取り残されていて大航海時代の繁栄は何も残っていなかった。
「それがだよ」
「共産化すればだね」
「工業化も果たせて」
「発展するというんだね」
「地主達もいなくなり」
 そしてというのだ。
「正しい農業が行われ工業も育つんだ」
「それなら」
「そう、あの国は左派が勝つよ」
「それは歴史の必然かな」
「マルクスが言っている通りね」
「それなら君は行くのかい?」
 あらためてだ、オズバーンはフィッシャーに問うた。
「あの内戦に」
「義勇兵としてだね」
「そう、どうするんだい?」
「実は考えていたんだ」
 ここでも迷わずに言うフィッシャーだった。
「あの国に行って」
「スペインの人民と共に戦い」
「そしてあの国の革命を成功させることをね」
 即ち左派による内戦の勝利をというのだ。
「考えていたんだ」
「では行くのかい」
「そうするよ、校長に話をしてね」
「命には気をつけるんだよ」
 オズバーンは熱い志を見せる同僚に優しい水を送った。
「いいね」
「革命で死ねたら本望だがね」
「命あって繁栄を見られるものだよ」
「だからなんだね」
「そう、戦いの中に身を投じても」
 それでもというのだ。
「命は無駄にしないことだよ」
「そのうえでだね」
「行って来るといいさ」
 こうだ、オズバーンはクールだがそれでいて暖かい声を友人に送った。友人のその言葉を受けたうえでだった。
 フィッシャーはスペインに入った、そしてすぐに義勇兵として戦いに参加したが。
 スペインにいてだ、彼は革命を願う人民達を見てまず驚いた。
「おかしい、殆どの人民が」
「ああ、左派を嫌っている」
「革命を望んでいない」
「彼等の理想郷になるというのに」
「どうしてなんだ」
 他の義勇兵達もこのことには驚いた。
「この反発は」
「非協力的どころじゃない」
「あからさまに反発を受けてるぞ」
「多くが右派にいっている」
「我々を歓迎してくれない」
「どうしてなんだ」
「革命が理解されていないのか」
 フィッシャーは疑念も感じた。
「これは」
「そうかもな」
「だからか」
「そして相手のプロパガンダか」
「それに敗れているのか」
「これではいけない」
 義勇兵達は言った。
「我々のことを理解してもらおう」
「人民なのだからな、誰もが」
「人民の人民による人民の為の革命だ」
「そうなのだから」 
 彼等はたどたどしいスペイン語で人民達に革命の意義を話した、だがそもそも立ち止まる者すらおらずだった。
 彼等は明らかに孤立していた、それは左派政権自体もだった。
 
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