第二章
[8]前話
「我がものにしたいですね」
「ははは、湖の中の月をかい」
「今からそうしたいとも思います」
「そう思うのは道理だね、私もね」
「先生もですか」
「そう思うよ」
「では今から一緒に取りに行きますか」
李白は孟浩然の言葉を受けてさらに言った。
「これから」
「いやいや、それには及ばないよ」
孟浩然はその李白に笑ってこうも言った。
「わざわざ湖に入るまではね」
「それはまたどうして」
「盃を見ればわかるよ」
見れば孟浩然も同じだった、微笑んだ顔だ。
そしてその微笑んだ顔でだ、こう李白に言ったのだ。
「君の盃をね」
「盃を」
「うん、見てみるんだ」
「はて」
そう言われてだ、李白は。
まずは首を傾げさせた、そのうえで孟浩然に問い返した。
「この盃を」
「よく見るんだ、その中を」
「はて」
李白は孟浩然の言葉に首を傾げさせるばかりだった、しかし彼の言葉に従ってその盃、今も酒を満たしているその中を見た。
するとだ、その盃の酒にだった。
月が映っていた、見事な満月はその中にもあった。
その満月を見てだ、李白は孟浩然に言った。
「そういうことですか」
「そう、月はね」
「満月の中にもですね」
「あるものからね」
「だからですね」
「私達はもう月を手に入れているよ」
その見事な満月をというのだ。
「こうしてね」
「そうでした、私も今気付きました」
「ではどうするのかな」
孟浩然は親しい微笑みで李白に問うた。
「これから」
「もう月は手に入れました」
その盃の月を見つつだ、李白は答えた。
「ですからもう湖には入りませぬ」
「そしてだね」
「はい、この月をです」
その盃の中の月をというのだ。
「これから飲みます」
「では私も」
孟浩然は李白のその言葉を聞いてだ、笑顔のままでだった。
二人で酒を飲んだ、中の月も共に。
李白と月 完
2015・11・20
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