50.第一地獄・千々乱界
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「――野郎ッ!!」
黒い硬殻に覆われた光沢のある首が鞭のようにしなり、音速を越えた速度でオーネストに突っ込む。空中から斬撃を放つオーネストの剣と、地に足をついたうえで死角をカバーするように振るわれた黒竜の角が、激突した。
――ィィィィィイイイイイインッ!!
鼓膜を削るような甲高い振動音が響き、刃が停止する。いや、重量とパワーで押し切られたオーネストが弾き飛ばされる。飛ばされながらオーネストは空中で体勢を立て直し、二本の投げナイフを投擲し、投擲の反動で空中を疑似的に移動する。本来ならば移動方法となりえない行動によって加速するのがオーネストという男の出鱈目な部分だろうが、更に出鱈目なのはこれほどの威力を込めて放たれた投げナイフの価値だ。
投げナイフには大砲並みの威力と速度が込められている。
逆を言えば、『たかが大砲程度の威力しかない』。
オーネストの斬撃には速度も威力も到底及ばす、当然ながらそれをあしらった黒竜にとっては豆鉄砲以下の価値しかない。二本のナイフは全く同時に黒竜の眼球に向かったが、黒竜はそれを『まばたき』することで弾き飛ばし、更に麒麟のようにしならせた首を袈裟に振り抜いた。
轟ッ!!!と、竜の首の形をした空気の塊が――僅か1秒にも満たない時間ではちきれんばかりに圧縮されて無理やり押し出された大気の爆弾が、空中を移動するオーネストに迫る。
「凍てつけッッ!!」
直後、オーネストの真下から、突如として巨大な『氷山』がせり上がる。しかも一つではない。オーネストと大気の爆弾を遮るように、100Mをゆうに超える人工アルプスの山々がたった一人の人間の思うままに連なり続ける。オーネストへの直接攻撃を阻む重複防壁だ。
これほど瞬間的、かつ大規模に氷魔法を発動させて狙い済ました形状に仕上げる事が出来る魔法使いはこのオラリオの何所を探しても一人しかいない。その気になれば一人で街を厳冬の季節に変貌させることが出来る、白銀の姫君唯一人だ。
刹那、氷山と大気の爆弾が接触し――空間全ての音を置き去りに、爆ぜた。
ほぼ無意識に、獣のような自己保存機能を頼りに、俺は『死望忌願』の鎖で作り上げた巨大な盾を形成して両足を大地に突き刺すほどに踏ん張っていた。
「くおおおおおおおおッ!?」
盾は表面が高速回転する円錐状の――ありていに言えば平べったいドリルのようなもので、このサイズと表面を高速回転する鎖ならばこの世の粗方のものは防ぐことが出来る。しかして、黒竜の放った大気の爆弾は、既にこの世にある存在として破綻した破滅力を以てして空間を埋め尽くし、盾が綻び、千切れ始める。
盾を維持する力がないなら、もう体で相殺するしかない。俺は盾で拡散させきれないエネルギーに身
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