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忘れ形見の孫娘たち
12.麻耶さんのワッシャワッシャ
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の時みたいにワシャワシャしますよ?』
『こわっ』

 ……やっと分かった。爺様がこの麻耶さんを秘書艦にした理由が分かった。思い出したよ爺様。

「あん? どしたー? 和之?」
「いや……なんか爺様と婆様思い出して……」
「ぶふっ……やっぱお前ら血が繋がってんなぁ和之」
「?」
「提督もさ。アタシがワッシャワッシャしてやったら“アイツを思い出した”つって泣いたんだよ」

 マジで?! あの爺様が?!!

「アタシもさ。あのひこざえもん提督のこと、なんだか他人に思えなくてさ」
「そうだったんですか……摩耶さん、痛いっす」
「わりぃわりぃ。ついな!」

 やっぱ爺様は、この摩耶さんに若い頃の婆様を見ていたんだ。……だから爺様は選んだんだ。みんなの中で、婆様にそっくりな摩耶さんを。

 僕の抗議を眩しい顔で受け流しつつワシャワシャし続ける摩耶さんは、今度はそのまま鈴谷の方を見た。

「鈴谷ー」
「ん?」
「お前がさ。ひこざえもん提督が来なくなってみんなが混乱してる中、一人で取り残されて苦しんでたのは知ってる」
「……」
「本当はさ。アタシたちがお前のフォローをしなきゃいけなかったんだ。お前が取り残されてみんなにそのことを打ち明けられなくて寂しかったのに……アタシたちは自分のことだけで精一杯で……」
「そんな……仕方ないじゃん。大切な人が突然来なくなったら、そらみんな悲しいし、なんでだろうって不安になるよ」
「うん。そのとおりだ。だけどアタシたちはそれにかまけて、お前も苦しんでるのにフォロー出来なかった。他のみんなはいいけど、アタシは秘書艦だ。その秘書艦のアタシが、新人のお前を気遣ってやれなかった」
「いいのに……気にしなくていいのに……」

 摩耶さんの突然の独白に恐縮しっぱなしの鈴谷が妙に新鮮で面白い。そう言うなよ鈴谷。麻耶さんの気持ちを汲んでやろうぜ。

「でもさ。そんなアタシたちのためにお前は頑張ってくれた。こんな素敵な機会をくれた。……ホント、お前には感謝しかないよ。ありがとう」
「いいのに……ホントに……鈴谷はただ……」
「ホント……サンキューなッ!!」
「うん。……鈴谷こそ、ありがと!」

 鈴谷の言葉を受け、麻耶さんは鈴谷の頭にも手を伸ばし、思いっきりワシャワシャしていた。やはり鈴谷にとってもそのワシャワシャは痛いらしく、顔は嬉しそうだけどとても痛々しい悲鳴を上げていた。

「いだだだだ! 摩耶さんマジ痛い!!」
「へへんッ。摩耶様とひこざえもん提督からの感謝のワシャワシャだッ!」

 お互いに感謝しあう二人を見て、僕は那智さんの一言を思い出していた。

――鈴谷は、仲間と打ち解けられてなかった

 でももう、その心配はないようだ。

「ありがとなー鈴谷!」
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