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忘れ形見の孫娘たち
12.麻耶さんのワッシャワッシャ
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怒ったり敵意むき出しだったりしてたわけじゃなくて、僕を見て混乱してたのか……確かに今ならわかるかも。なんとなくあの態度は、予想外の出来事に頭がついてきてなかった態度だったのか……

 でも不思議なこともあるんだねぇ。僕を見て“懐かしい”だなんて。まるで昔の僕のことを知ってるみたいな口ぶりだ……。

「麻耶さんこそ、来てくれてありがとうございました」
「あん? なんでお前がアタシに礼を言うんだよ?」
「来てくれるか不安だったんです。余計なお世話じゃないかって……ひょっとしたらただ辛くなるだけなんじゃないかって、ずっと不安でした」
「そっか」

 そして僕も、摩耶さんに対してずっと不安を抱えていたことを告白した。心の何処かで僕はずっと不安を感じていた。爺様にとって特別な存在だったはずの摩耶さん。それは彼女にとっても同じはずで、摩耶さんにとっても爺様は特別な存在だったはずだ。

 今回の“グッバイひこざえもんプロジェクト”は、悪く言えば爺様の死を無理矢理叩きつける行為だ。悲しみに打ちひしがれている人に対して『爺様は死んだんだ』と乱暴に事実を受け入れさせる行為だ。それでもみんなは……摩耶さんは受け入れてくれるのか、正直不安で仕方なかった。

 だから、僕は摩耶さんから『ありがとう』と言ってもらえて、フッと両肩が軽くなったことを感じた。よかった。これで完璧だ。“グッバイひこざえもんプロジェクト”は大成功だ。もう思い残すことはない。やってよかった。本当に……やってよかった。

「本当に……ありがとうございました……ひぐっ」
「おいおい……何泣いてるんだよーお前は泣く側じゃないだろー?」
「いや、あの……なんかホッとしたんです……ひぐっ……」
「ったくよー。これであのひこざえもん提督の孫ってんだから……」

 ちょっと困ったような……でもニカッと眩しい笑顔を僕に向けてくれた摩耶さんは、さめざめと泣く僕の頭をガッシと掴んでワッシャワッシャと撫でてくれた。

「ありがとなー! 和之ッ!!」
「あ……」

 僕の頭に思い出される、とてもとても幼いころの記憶。爺様がまだ元気で、婆様もとても可愛くて、二人によく遊んでもらってた頃の、今日みたいな夏の日の思い出。

『かずゆきー!! よくやったなぁー爺様はうれしいぞー!!』
『やめてじいさま! 頭ワシャワシャしないで! いたい!!』
『ブァハハハハ!! 婆様直伝の頭ワシャワシャはまだかずゆきには痛いかッ!!』
『ちょっと……やめてくださいあなた……若いころのことなんて……』
『婆様もな? 若いころはこうやってよく俺の頭をワッシャワッシャしたもんだ!!』
『そうなの?』
『そうだぞー。初めてやられた時はな? 爺様も痛かったんだぞー?』
『その辺にしていただかないと……あ
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