15話
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いか、箒にたいしてどことなく気の入っていない言葉が出てしまった。ダメだ。急いで切り替えないと。
ありがたいことに目の前の箒は気づかなかった。
「よ、よく見ているな」
寝間着に簡易的な浴衣を着用している箒の声に棘はなく、先ほどよりもずっと穏やかなものだった。……気づいてもらったことが嬉しかったのか?
「……あぁ、今まで使っていた帯とは色も模様も全然違うからな。毎日見ていればわかるさ」
ダメだ、どうしても声が沈んでしまう。
「そ、そうか。私を毎日見ている……か。そうかそうか」
上機嫌に頷く箒。やっぱり嬉しそうだ。女の子はこういった些細なことが嬉しいんだろうか?
「よし! 私は眠るとしよう」
そのテンションに思わず苦笑してしまう。寝る奴のテンションじゃないと思うな。
箒が自分のベッドに入ったのを確認して、俺はもう一度机の前の椅子に座りノートパソコンの映像を再生する。どうせしばらくは眠れそうにもない。身体は疲れているのに頭が冴え切っている。
流れる映像に集中して観察する。静寂に包まれた室内はヘッドホンから漏れる僅かな音だけだ。
どれだけ時間が経っただろうか。30分か、1時間か。
「なぁ……一夏」
唐突に箒が口を開いた。まだ起きていたのか。とっくに眠っていたと思ったけどな。俺は振り返らずにその声に答える。
「……うん? どうした、箒?」
「……月夜は……私を、姉さんを恨んではいないのだろうか?」
その言葉に俺は驚いてしまった。なんで突然箒はそんなことを口にしたのかが分からなかったからだ。
「なんだよ突然」
箒の表情は見えない。だけど苦しそうな表情をしているような気がした。
「……すまない。この前の休日、部活が終わって部屋に戻ってきた時、お前たちの会話を聞いてしまった」
……そう、か。
「……もし、ISがなければ月夜はご両親を亡くすこともなかったし、月夜が好きなゲーム……いや、e-Sportsか。その世界から姿を消すこともなかっただろう。沢山の大切なものがあったのに、それを捨てさせてしまった……あいつはISに対してハッキリと『嫌い』だと口にした」
「……」
……俺は鬼一じゃない。箒の言葉に対して、本人じゃない俺がそれに対して口を挟むことはできないからだ。
「姉さんがISを生み出したことで確かに誰かが救われたのかもしれない。だけど、それ以上に、ISが生まれたことで絶望を味わった人もいるんじゃないのか?」
箒の言葉は徐々に震えたものになった。
「月夜なんてまさしくそれじゃないか。小さな子供が親を亡くして、そこから立ち上がって自分の力で一つの世界の頂点に立って、たくさんものを勝ち得たのに、あっさりとそ
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