15話
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だ、漠然と『守る』ことしか考えなかったと思う。鬼一はつまりe-Sportsを、e-Sportsに『守り、守られた』、とも言えるんじゃないのか? あいつにとってその世界が何よりも好きだったから、それこそ自分を削って戦うことを選んだ。同時に人を傷つけることも選んだ。その先にある救いを目指して、その先で自分も含めてたくさんの人が救われると信じて。
……俺は、千冬姉の『救い』になれるのか? 俺はそれだけの戦いができるのか? 更衣室で俺はそれは間違っていると鬼一を否定した。『救い』を否定した俺が誰かに『救い』を与えることができるのか。……そのためにいつかは誰かを傷つけてしまうのだろうか? 誰かの痛みの上に救いを築くことになってしまうのだろうか?
家族だからこそ、たった1人の家族ならではの方法を見つけて、その方法で千冬姉を救えるのだろうか。俺は、俺は、千冬姉の名前を汚してしまったのに。でも、ISを持った今ならその汚名を雪ぐことが出来るかもしれない。他ならぬ俺の手で。
千冬姉の汚名を雪げるのは、その原因でありISを使える弟の俺しかいない。でも、千冬姉と同じようにモンドクロッソの優勝を目指せば、その過程にある戦いは俺と同じように絶対に譲れない人たちがたくさん出てくる。結果、勝っても負けてもどちらかは傷つくことになってしまう。
俺が掲げた『守るために誰かを犠牲にしてはならない』。これを否定することになる。戦うという選択肢を取っている以上、きっと死ぬまで突きつけられる矛盾。それがずっと付き纏うことになる。
守るために、救うために戦えば必ず誰かが犠牲になる。でも、戦う以外の選択が今の俺には分からないんだ。千冬姉の汚名を注ぐためには最低でも同程度の成績は出さなきゃいけない。
答えが見つからない。誰も傷つかない方法が分からない。あの時、俺は誰かを傷つけることになっても、誰も傷つけない方法を探し続けると決めた。けど、仮に見つけてもそれまでに犠牲になってしまった人たちはどうすればいいんだ? その犠牲になってしまった人たちは傷つくだけで、救われないことになってしまう。
鬼一は戦えば必ず誰かが傷つくと教えてくれた。あの時は分からなかったけど、今は分かる。
『戦い』、というのは自分とその相手に必ず譲れないものがあるから成立するんだ。俺と鬼一にはあの時、確かに譲れないものが、信念があったから『戦い』になったんだ。結果は引き分けだったけど、もし敗北してれば……。
―――俺たちは一体、どうなっていたんだろう?
「い、いいぞ」
ドア越し、部屋の中から箒の言葉が聞こえた。ドアから背中を離して身体を向き直る。そのままドアを開けて中に入る。
「……あれ? 帯が前と違うやつだな。新しくなってる」
考え事をしていたせ
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